5話 ドタバタここに極まれり
あの万感の想いを込められた拍手の後、俺たちは従者長とメイド長と名乗る初老の男性とマダム然とした女性に引き連れられて王宮内の案内を受けた。
俺にとっては2度目なので、勝手知った人の家という感じだったのだが、所々が変わっていたりしてまあまあに見所があった。
しかし、この国に食客として来ていた俺とも仲のよかったやつが数人居なくなっていた事には驚いたが…
そんな感じで大人数でゾロゾロ歩いていると嫌でも目に付くらしく王城で働く人々がこちらをチラチラと見ては噂話をしていた。
「フンッ人間は本当に噂話が大好きじゃな、コソコソ話とらんで直接聞けばよいものを、のう?あまね」
その官吏達の様子を見ていたリアが鼻で笑いながら挑発したが周りのクラスメイトが慌てて止めに入ったり…
「あまねあまね!あの人!今あの人飛んだよ⁈すごい!」
中庭で騎士見習いの模擬戦の様子を通りすがりにみた柚姫がちょうどたまたま跳躍した騎士をみて大興奮したり…
ちなみにその柚姫の様子を見たクラスメイト(男)達が侍従長にどうやったら同じ事ができるようになるか詰め寄って聞いてたり…
そんなこんなで終始ドタバタしながら王城見学ツアーは幕を閉じた。
今は案内された各自の部屋で歓迎パーティーの開始を待っている。
部屋の隅にベッドがあり、壁には本棚。
またベッドサイドには燭台が置いてある。
倒れたら大惨事だなぁなどと前回の時は思っていた。
広さは一般家庭のリビングダイニングを合わせたくらいの人1人に割り当てるには広すぎるくらいの部屋だ。
クラスメイト達はこんな豪華で立派な部屋に泊まれ、しかもこの世界に滞在中は自分の部屋になると聞いてすごく喜んでいた。
ちなみに女子の部屋には備え付けのシャワーがあるらしい。
女子達は手を合わせて喜んでいたが、まあリアの場合はどうだろうか…
する事が特にないので部屋のベッドにゴロンと横になりながら今後のことを考える。
もちろんこのままクラスメイト達と一緒に勇者業に勤しむつもりは微塵も無い。
大体、大広間での大臣たちの口ぶりから俺は清く正しく心優しい王女様達を裏切った大罪人らしい。
それを聞けば大体その後の展開も読めるというものだ。
自分たちのやらかした事すら全て俺に擦りつけていることだろう。
こんな奴らをまた助けてやる事もない、俺は自分の復讐を遂行するまでだ。
しかし、リアは元々この世界の住人だから連れて行くのはいいとして問題は柚姫だ。
どうせ今回だって、魔物を倒して魔王を倒したら、元の世界になど帰さず悪事を擦りつけるか有る事無い事罪をでっち上げ処分するつもりであることは明白。
そんな奴らの中に、最近クッソ生意気でうざい幼馴染を置いて行く気にもなれない。
かといって、復讐に同行させるのも…
とさっきからずっと考えがループしている。
もしくは、先程の案内で空室となっていた部屋の元住人がいればあるいは解決策を出してくれただろうか。
など益体も無い事を考え始めた頃、部屋の扉がノックされた。
「お時間でございます。お支度は出来ておいででしょうか?」
少し高い声の女の子が返事をする前に部屋の扉を少し開けて顔をのぞかせた。
「…大丈夫です」
少しの沈黙で自分の失態に気がついたのだろうメイド服の女の子は部屋に入ってきて、ぺこりと頭を下げた。
「あっ、お返事をいただく前に開けてしまい申し訳ございません。一刻も早くアマネ様にお会いしたく気が急いてしまいました。」
その謝罪を聞いた瞬間、バッと飛びずさり、異空間から剣を出し構えながら質問をする。
「お前は誰だ」
「あっ、ひどーい忘れたの?わたしだよわたし」
シクシクと泣き真似をしながら、こちらを煽る目の前の少女に気を抜かないで質問を重ねる。
「だから誰だ」
「わたしだよわたし!ほら!分かるでしょ⁈銀髪の美少女ちゃん!一緒に闘ったりしたでしょう!」
数秒
「………セラか」
気が抜けてついつい剣を床に置く。
ついでに特大のため息をついておくことも忘れない。
「ピンポンピンポン大正解〜、中々気づかないんだもんわたしは悲しかったよ〜」
セラ・シルヴィア
先程思い浮かべていた人物が目の前にいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます