第67話 摩耶 インタビュー 2


「すいません兵庫テレビの田中です。すると固有の周波数を持つ水晶を持った人が神社の鳥居をくぐれば誰でもが瞬間移動が可能なのですか?」


「いえ、誰でもはできません。ミスマルノタマというあなた方が言うバリアというか結界みたいなモノを身にまとう必要があります」


「ミスマルノタマ?」

「結界?」


「そうです」


「い、いいですか?瀬戸内ラジオの山添です。そのミスマルノタマはどのようにして身にまとう事ができるのですか?」


「はい、ミスマルノタマをまとうには次の二つのことが必要です。まずはこれからの世の中は『物質文明』から『精神文明』に変わるという信念を強く持つことです。すなわちお金や不動産、モノをたくさん持つのが幸せではなく、精神が豊かな人が幸せになる世界です。次にカタカムナ人たちが何千年と伝承してきた『カタカムナウタヒ』という呪文のようなウタを唱えることです」


「カタカムナウタヒ?」


「はい。実際に唱えてみましょうか?」


「是非お願いします」


 報道陣の要請に応えて、摩耶は両手を前に差し出してカタカムナウタヒをゆっくりと唱えだした。


「ヒフミヨイ マワリテメクル ムナヤコト 


 アウノスヘシレ カタチサキ


 ソラニモロケセ ユエヌオヲ 


 ハエツヰネホン カタカムナ」


 するとカタカムナウタヒを大きな声で歌う摩耶を囲むようなまばゆい球体の光が現れ出した。


 にわかに体育館の壇上が明るくなった。


「パシャ、パシャ、パシャ」

 報道陣のフラッシュが、さらに光る。

 たくさん並んだテレビ局のカメラもその画像をお茶の間に届けた。

 もう誰の目にも明らかである。


「おー!」


「こ、これがミスマルノタマか・・・」 


「綺麗だ・・・」


「神々しい・・・」


「うぉー!奇跡です!みなさん今私の前で奇跡が起こりました!」

 大声で「奇跡」を連発している茶髪頭がいた。

 間違いなくユーチューバー・タマ袋だ。

 静粛を保つ他の報道陣に比べてとにかく騒々しい。


「さあ、みなさん、ご覧になりましたね。いかがでしょうか?」

 まばゆい光の球体の中の摩耶が報道陣に尋ねた。

 その姿はまるで宗教画の聖母マリアの降臨であった。


「素晴らしい!の一言です。今歌われたカタカムナウタヒの意味を是非教えていただきたいです」


「はい、まず私たちの宇宙は10次元世界まであります。そして全てのモノには表と裏の二面があります。それを『顕在世界と潜在世界』と言います。宇宙の全ては渦で始まり渦で終わります。何事もこの世界は渦が基本です」


「素晴らしい!」

「まるで神の降臨だ!」

「奇跡を見るようだな」


「素晴らしいモノを見せていただきました。日本海ケーブルテレビの石崎です。先ほどのミスマルノタマをまとえる人は現在何人いるのですか?」


「残念ながら、カタカムナ人を除いて今のところ私だけです」


「日経モダンタイムズの船越です。つまりこのシステムの普及こそが今までの資本主義、すなわち『物質文明』の終焉を意味するのですか?」


「はい、少なくとも私はそう信じています。つまり貧乏とかお金持ちとか過去の話になります」


「神戸シテイライフの吉原です。ふーちゃん、違った。摩耶さんは自分のこの特別な能力を将来どのように使うつもりですか?」

 父親の会社の編集長、吉原の顔を見て摩耶は少し緊張がほぐれた。


「吉原編集長。私は遠隔地に住むというだけで教育や医療に恵まれない貧困層の子供たちにこの装置を使ってちゃんとした環境を与えたいと思っています」



 その後、報道機関から様々な質問が一時間ばかり続いた。


「さー、みなさん。いろいろと質問があると思いますがとにかく『百聞は一見にしかず』といいます。どうでしょうか摩耶さんと一緒に実際の瞬間移動を体験しましょう」


「「わかりました。異存ありません」」


「「是非撮影させてください」」


「わかりました。幸いその『お化けトンネル』はうちの高校のすぐ南にありますので歩いて移動が可能ですので私に付いて来てください」

 そう言うと中居は報道陣を連れて体育館を出てお化けトンネルのほうに全員を誘導した。


「パチ、パチ、パチ」

 二階のギャラリーで三人の拍手が起こった。

「いいわね。摩耶ちゃん、完璧!」

「めっちゃええインタビューやおまへんか?」

「まるで教祖様みたいなんだナ」

「それより、星。報道陣用に別の水晶を摩耶ちゃんに渡した?」


「心配御無用なんだナ。摩耶さんには伊勢神宮行きと出雲大社行きの水晶をちゃんと渡したんだナ」


「そう、ならいいわ。さすがね!」

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