第186話 自社株評価 2
支店に戻って俺は預かった上場企業の株券を全て経理に回して金庫にしまった。
概算で5000万円ほどあった。
そして上場してない株券を会議室のテーブルの上に広げた。
合計で20社ほどあった。
全ての株券の会社名と住所を記録して、パソコンに向かう。
俺の証券会社のパソコンには未上場企業のすべての住所や電話番号などのデータがインプットされていたので、これに照合をしてパソコン内にデータがあれば「生きている会社」もしなければ「死んでいる会社」と言うふうに全ての株券を分類した。
なんか、新聞を見ながら宝くじの「当たり」と「はずれ」に分ける作業に似ている。
「頼むから全部の会社が生きてるように」と俺は祈りながらの作業であった。
しかし俺の願いもむなしく20社のうち、今も生き残って営業している会社は僅か1社だけであった。
まあ、宝くじよりは高確率だ。
その会社は高槻市にあるS工業と言う建築資材の会社であった。
株数は10,000株であった。
もちろんこの会社は上場していない。
しかし長い期間生き残っていると言う事はおそらく良い会社なのであろう。
俺はこのS工業の株券を株価算定部に送って自社株評価をするように頼んだ。
余談ではあるが証券会社の部署として、未上場企業の株価の算定をするセクションがあった。
もちろん無料である。
俺はこの無料の「自社株評価サービス」を用いてかなりいろんな法人の新規開拓に使ったものである。
やはり、どの会社も自分の会社の株価と言うものは興味があったからである。
非常にありがたがられた。
さて、自社株評価の算定方法には主に以下の3つの方法がある。
1 上場している同業他社の株価から算定
2 その会社の解散価値からの算定方法
3 一株当たりの利益から現在のPERをかけてはじき出す算定方法
概ねこの3つの方法で株価が算定される。
1はおそらくイメージできるであろうが、2と3を説明する。
2の会社の解散価値とは何であろうか。
仮に「明日会社を終了します」と言った場合、その会社の持ってる不動産や預金、債権など金融価値のあるものすべての財産を現金化する。
これが会社の解散価値である。
そしてそれを株数で割ったものが株価となる。
要するに「今日の会社の価値」そのものを株数で割るわけである。
これは非常に硬い株価が出る。
しかし歴史の古い企業などは意外と土地を持っていて、その土地の値上がりの大きさのためにとんでもない株価が出てくることがよくある。
3 その会社の将来の価値を算定する。
どういうことかと言うと、現在営業していて利益が出ている会社の場合は、前年度の会社全体の利益を株数で割る。
これを「1株当たりの利益」と言う。
それにこの業界のPER(その業界の勢いを示す係数)と言う数値をかけて株価を算出する。
さあ、いくらの株価が算定されるであろうか?
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