第76話 女性新入社員研修 1
いたずら電話その1
午後2時
「 もしもし○○証券さんですね。株価調べて欲しいんですが」
「はい株価ですね、しばらくお待ちください。今クイック(株価がリアルタイムにわかるコンピューターの端末)の前に移動しますから」
「ほな、サントリー今いくらかな?」
「はいサントリーですね。少々お待ちください」
「はよ調べてや。値段はすぐに動くからな」
「はい、すいません。ちょっと待ちください」
「まだかいなー、遅いなー」
「あの・・・すいません。サントリーのコード番号分かりますでしょうか」
「わかれへん、そんなもん!それを調べるのも証券会社の仕事やろ」
「は、はあ。もう少し待っていただけますか」
「もう、いつまで待ったらええんや!」
このやりとりは何かと言うと証券マンの女子新入社員に対するいたずら電話の場面である。
先輩社員が場中のくそ忙しい時にわざわざ電話で自分の店にかける。
電話が鳴る。
女の子が出る。
その女の子が新入社員だとわかると前述のやり取りをわざとふっかける。
そしてそのやり取りを見て楽しむ。
の図式である
全くもって極悪非道の図式であるが日頃娯楽の少ない証券マンにとっては結構な清涼剤になった。
新入社員の女の子は入社したてなので株式の銘柄なんて全部覚えていない。
だからわざと上場していない、なおかつ有名な会社(例えばサントリー、竹中工務店、電通、出光興産、日本生命)などの株価を尋ねる。
当然、誰もが知ってる有名な会社であるから彼女達は上場しているものと勘違いする。
上場していたらクイックという端末で直ぐに値段が出るのであるが銘柄コードという各企業に割り当てられた4桁の数字を入れる必要があるのである。
例:大成建設 1801 東京電力9501
当然そのコードを四季報をめくって必死になって探すがもちろんそもそも上場していないから載っていないので慌てまくる。
「あの・・・太田さん。電話中すいません、サントリーの銘柄コード番号何番でしたっけ」と背中越しに電話の張本人に聞く始末。
「あかん、今電話中や」という指でバッテンマークを出してさらに困らせる。
子羊が猛獣に会った時のようにもう完全に怯えた顔をしている。
その顔を見て満足したので電話を切る。
「す、すいません、お待たせしています。あれ?あれ?電話切れてる・・・」
いやはやごめんなさい。
これが我々先輩営業マンの活力になっていましたのでひらにお許しを・・・
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