第10話 棒倒し
「棒倒し」
土曜日の午後3時になると恒例の「棒倒し」がグラウンドで行われます。
みなさんも運動会や体育会で同じ種目があると思いますが、われわれの棒倒しのルールは今のルールとは全く違うものでした。
200mほど離れて紅白に分かれたチームがお互いの守っている棒を倒すところまでは同じルールですが、この合戦のあいだは「無礼講」で上級生であろうが級友であろうが思い切りぶん殴っても文句を言われない合意がありました。ですから攻撃側は「用意!始め!」の合図とともに日ごろから目をつけていた先輩を見つけてわざと殴りに行きます。
しかし我々下級生は棒を守るために円陣を組んで守備に回されるので相手の攻撃陣が来るや否や肩や頭を踏んづけられて登られるのにひたすら耐える係でした。
はるか頭の上では取っ組み合いや殴り合いが展開する音しか聞けないので今、自分達のチームが勝っているのか負けているのかの戦況すらわからないままにゲームが終わります。
わずか3分あまりの「棒倒し」が終わると構内の医務室は殴られてパンダのように目の周りが黒くなった生徒や体操着がボロボロに破れて血まみれになった生徒たちでいっぱいになったものです。
しかし週一回のこの棒倒しがわれわれが唯一先輩を殴れる機会でしたので仮に殴れなくても「息抜き」になったのは事実です。
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