第24話 アカの他人の結婚式に乱入
結婚式の話をしたついでにこういうファンキーなこともあった。
ホーチミンには金持ち層が利用する結婚する結婚式場として「ホワイトパレス」というグループが経営する派手な結婚式場がある。
かなり豪勢なつくりでそこそこ金を持った成功者たちは見栄を張りたい一心で自分の娘や息子をこの結婚式場で式を挙げることを希としている。
そこで付き合いのある社長達から「来週の日曜日朝10時にホワイトパレスで私の息子の結婚式があるので是非来てくれ」などとの誘いをよく受ける。
その場所はタンソンニャット飛行場の近くにある。
俺も何度も行っているので場所の見当はついている。
早速日曜日の当日朝10時、約束の時間に結婚式場に行くと例によってまだ誰も来ていない。
受け付けもいないから祝い金を渡すことなく部屋に入って待つ。
前述したが時間通りにくるのは日本人だけである。
たまたまそこに他の日本人が招待されて来ていたら日本人だけが一つのテーブルに固まって早速ビールを注文して飲み会が始まる。
どうせメインの新郎新婦がやってくるのは12時ぐらいである。
それまでには我々は日本人は完全に酒が回り出来上がっている。
ぼつぼつと周りのテーブルにはベトナム人の友達や新郎の新郎新婦の親戚援助たちが集まってきて我々日本人のテーブルに「乾杯」と言ってグラスを傾けてくる。
みんな非常に友好的である。
我々はもう完全に出来上がってしまっているので周りのテーブルの連中とは打ち解けてしまっている。
そこで新郎新婦の入場っていうことになる。
しかし初めて見る新郎新婦であるから当然顔は知らない。
しかも俺を誘った社長を探すのであるがどこにもその顔が見当たらない。
このあたりからなんとなく「変だな?」という感覚になってくる。
新郎の父親がテーブルに来て挨拶するがあきらかに俺の知っている社長とは違う。
そうこうしているうちに俺の携帯電話が鳴る。
本当の新郎の父親である。
「胡志明さん、今どこにいるんですか?もう式はとっくに始まってますよ」
「いや、俺はもうホワイトパレスに来てテーブルで飲んでるんだけれども・・・」
「どこのテーブルですか?」
と何か電話のやり取りが食い違いがある。
「ちょっとトイレに行ってきます」と俺はテーブルを離れる。
トイレに行くふりをして別の部屋を確認する俺。
ホワイトパレスは合計四つほどの大きい部屋があり、各入り口には新郎新婦の顔写真と名前が掲げてあって、その部屋は誰の結婚式かが分かるようになっている。
しかし新郎新婦の顔を知らないし、日本人にとってはどの名前も同じように見える。
しかもそもそもグエンという名前が多すぎる。
要するに俺は見も知らない人間の結婚式場に早くから入り込んで大酒を食らい、くだを巻いて出来上がっているのである。
2つ隣の部屋では見慣れた俺の知り合いの社長が入り口まで出て来て「さぁこっちだ!」というように手招きをした。
しかし一方で先ほどまで2時間飲んでいた部屋ももう既に人間関係が出来上がってしまっておいそれとは移動できないような状況になってしまっている。
俺は後ろ髪を引かれる思いで本来の結婚式場に招かれて席について「乾杯!」コールをやる次第である。
しかしそこで俺は考えた
「日本人である」というだけで毎日どこかの結婚式場に顔を出してそタダ飯が食えるのではないか?
そもそも両家からは顔が知られていない。
実際に日本人が席に着いていれば怒られることはほとんどない。
それどころか「日本人が来ている」というだけでその結婚式そのものの質が上がり双方に非常に喜ばれるのである。
もし俺がベトナムで食えなくなったら必ずこの手で毎日タダ飯作戦を敢行することになるであろう。
っていうか最初に会ったテーブルの日本人たちも既にその作戦だったのかもしれない。
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