第8話.集落攻め
(やっぱり実戦は全然違うな)
戦うときの緊張感。
一歩間違えれば殺されるプレッシャー。
訓練もいいが、実戦でしか得られないものもある。
(さてと、帰るか……)
そろそろ森に入って二時間が経つ。
もう戻らないと森に行ってたことがバレるかもしれない。
そう思った俺は急いで村に帰った。
――俺は村に戻るやいなや弓の練習をしていた。
剣の腕はある程度強くなったと思うが、まだ弓が今いちだ。
今日も弓が良ければもっと余裕で勝てていただろう。
そこから一時間ほど弓に没頭した。
もっと強くならないと。
強く、強く。
木の的が一瞬ゴブリンの姿と重なり、その頭に矢が刺さった。
最後の一射はど真ん中だった……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さらに三ヶ月がたった。
3か月前に4体のゴブリンを倒してから、ほぼ毎日森に入っていた。
当然父さんと母さん、村の人にはバレたが、俺の実力を買っているラモンの強い説得のお陰で一人で森に行くことを認めてもらえた。
もちろん母さんは猛反対したが、父さんと俺の説得に何とか納得してもらえた。
俺はその時母さんに、゛冒険者になりたいんだ!〝ということを伝えた。
母さんもそれを聞いたときは驚いていたし反対していた。
母の気持ちも分かる。
冒険者は他のどの仕事より死亡率が高いのだ。
一人前の冒険者になるまでに3割の人が死ぬ。
本当ならもっと死ぬ確率は高いのだが、冒険者ギルド側の努力でなんとかこの数字に押さえているのだ。
だから母が心配するのは当然である。
母は不満そうな顔をしていたが、最終的には冒険者になることを認めてくれた。
――今もまた森の中である。
この三ヶ月で、剣と弓の腕はまた上がっていた。
これも森に自由に入れるようになったことが大きい。
実戦を積み重ねることによって確実に腕が上がっていった。
今なら10体のゴブリンに囲まれても勝てるだけの実力がある。
さすがに無傷とはいかないだろうが……
「シュッ……ドス」
また、ゴブリンを倒した。
最近は楽に倒せるようになってきたせいで緊張感に欠けていた。
(そろそろ、小さな集落でも襲ってみるか)
ゴブリンは集落をつくり、数十体~数百体単位で生活をしている。
俺はその内の20体程度の集落を襲おうと考えていた。
目星は付いている。
この三ヶ月後ほぼ毎日森に来ていたのだ。
もちろんゴブリンの集落を見つけたこともある。
しかし、見つけた集落の規模が大きすぎたり、まだ集落を襲うのは早いと思っていたので、止めていた。
俺は以前見つけた集落に行くことにした。
――そこには18体のゴブリンがいた。
縦、横40メートルぐらいの広さの所に18体のゴブリンが生活している。
そして、集落にはゴブリンが作ったであろう簡易的な家が建っている。
さてと、どうやって戦うべきか……
周りには木が生い茂っているから、木に登ってそこからゴブリンを狙うのもありだ。
俺は木に登って集落の状況を見る。
今、外にいるのは12体。
他は家の中にいる。
久しぶりに胸が高鳴っている。
さて、どうやってこの集落を落とそうかな。
弓で殺すと直ぐ場所がバレてしまうしな……
よし、時間をかけて攻略していくか。
「攻略開始だ!」
ゴブリン達の集落には見張り役がおり、四角形の集落に4体の見張りがついている。
その4体は、四角形の角に立っているのではなく、四角形ABCDがあったとしたら、ABの中心、BCの中心の場所という形で4ヶ所に立っている。
俺はまずその4体の見張りから倒すことにした。
まずは1体目。
少し離れたところからわざと草を揺らしてゴブリンに気づかせる。
すると、そのカサカサという音にゴブリンが気づいて警戒しながら様子を見に来た。
俺は近くの木に隠れながら様子を見守る。
ゴブリンは直ぐ目の前にいる。
今出ていって殺してもいいが、もし一撃で殺せなかったり、失敗した場合仲間に知らされる可能性がある。
そうなると、俺に勝ち目が無くなってしまうので、確実に一撃で殺しにいく。
ゴブリンは何も無かったので帰ろうとするが、その背中を向けた瞬間に飛び出し後ろからナイフでゴブリンの首を切り落とした。
ゴブリンは俺が飛び出した瞬間、音がしたので後ろを振り返ろうとしていたが、振り返る前に殺した。
これで1体目。
残りの3体の見張りも同じやり方で殺した。
これで残り14体。
まだ、ゴブリン達は見張りが殺されたことには気づいていない。
そこから木の上に登って様子を見た。
しばらくすると、1体のゴブリンが見張りがいないことに気付いたようで、森の中に探しに行こうとしているのが見えた。
そのゴブリンがいるところは、反対側だったので急いで近くまで移動する。
そして、見張り役を殺したときと同じやり方でまた殺した。
(そろそろ弓で攻撃していくか)
残り13体になったところで弓での攻撃にシフト変更する。
2体のゴブリンが歩いている所を森の中から狙い撃つ。
1体のゴブリンの胸に矢が刺さり、倒れた。
残り12体。
「ギィ!……ギギィ!ギギィ!」
隣を歩いていたゴブリンは驚きの声を上げたが、すぐに敵襲だと判断し叫んで仲間に知らせる。
すると家の中にいたゴブリンが外に出てきた。
俺はその場からすぐに移動し、反対側までいく。
そこから様子を見るとゴブリン達は殺された仲間の所に駆け寄っており、何体かは先程まで俺がいた辺りを捜索していた。
俺はそこから弓を構え、射る。
距離はおよそ30メートル。
矢は、ゴブリンが集まっている所に真っ直ぐ飛んでいき首の辺りに刺さった。
「ギィ!」
ゴブリンは驚き、こちらを振り返る。
俺はすぐさまもう1本の矢を準備し射る。
その矢もゴブリンの足の辺りに刺さり行動不能になる。
これで残り10体。
ゴブリンは既に槍と小剣を構え4体がこちらに突撃してきている。
俺は弓を捨て剣に構え直す。
ゴブリンはもう目の前まで来ていた。
ゴブリン達にも足が速い奴、遅いやつがいる。
そのため、俺の所に来る頃には1列のような形になっており、一瞬だけ1対1の形になる。
俺は冷静にゴブリンの攻撃を見切り、剣を振り下ろす。
俺はその勢いのまま、後ろにいたゴブリンも斬り殺す。
2体目を倒したところで、こちらに突撃してきていた残りの2体は急ブレーキを掛ける。
俺の強さを見て突っ込むのは危険と判断したようだ。
このまま睨めあっていてもいいが、後ろにいるゴブリン達に来られても面倒なので、先に攻撃を仕掛ける。
左側の小剣を構えているゴブリンに下段から斬り上げる。
ゴブリンは防御しようとするがその腕ごと斬った。
小剣と剣ではリーチが違いすぎるから、ゴブリンが俺の攻撃を防ぐのは難しい。
俺が腕を斬った瞬間、右側にいたゴブリンが槍を突いてきていた。
俺は斬り上げた剣をそのまま右斜めに振り下ろし槍を斬った。
ゴブリンの槍は先端は石か鉄で出来ているが、他は木で出来ているから斬ることは簡単だ。
槍を斬られたゴブリンは驚いていた。
武器を失い無防備になったゴブリンに剣を突き刺す
そして、腕を斬られ痛みに必死に耐えながら、こちらを威嚇していたゴブリンも斬り殺した。
その様子を見ていた残りのゴブリン達は勝てないと踏み逃げ出した。
そこからは俺の一方的な残虐になった。
森の中に逃げるゴブリンを追い後ろから斬り殺す。
2体だけ逃がしてしまったが、集落を落とすことには成功した。
苦戦すること無く攻略できたことから、自分が成長していることを実感できた。
(集落には何かないのかな。)
俺はせっかくなので攻略した集落を探索することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます