第3話 ■「とりあえず整理しよう」

 僕としても、蛾として生まれ変わることは流石さすがに避けたいところだ。

 二か月後にまた死んで次の転生にワンチャンって考えもあるだろうけど。


 人生がかかっているだけに賭けにでるのは正直、御免ごめんこうむる。


 とすると、神が提案してきた取引に応じるしか手は無い。

 人間に生まれ変われない奴に提案しているようだから、まず断られるという事はあまり考えてないんだろう。

(実際のところ本当に次に蛾に生まれ変わるのかの証明はできないけど)


 と方向性を決めたところで、今の説明で気になる部分を一度整理してみよう。


 まず気になるのは、人生をモニタリングされるという事だ。

 誰かにいつも、もっと言えば、トイレやエロタイムも見られていると考えると精神衛生上よくは無い。


「昨晩はお楽しみでしたね。」


 と他人に返されたらもう立ち直れないかもしれない(僕には勇者的な図太さは無い)。


 けど、目の前の爺さんが恐らく神である以上、これまでの人生も普通に見られていたと考えてもおかしくは無い。

 なんたって「神様はなんでもお見通し」なのだ。


 それを今後、僕が意識するかどうかでしかない。

 そこまで神経質でもないから正直これは重大な問題か?

 と聞かれると「別に」という感じだ。


 実際にそんな環境になる事がまだ理解しきれていないだけかもしれないけど。


 とりあえずこれは良しとしよう。


 二つ目は、転生先が百年後に何らかの原因で人類が滅びるという事だ。

 転生先の人の寿命がどれ位なのかはわからないが、百年というと三十歳を迎える前に死んでしまった僕にとってさらに三倍以上という事で、正直かなり未来の感覚でしかない。


 普通に考えると子や孫、ひ孫世代の話だから、孫よ後は頑張れ! と応援したいところだ。


 しかも神の話だと、滅びに抗うあらがう事を強制されるわけではない。

 ただ、僕が転生することで異分子となり、歴史は大きく変わりだす可能性があるという事も一応考慮しておく必要はありそうだ。


 ただ、そんな滅亡する未来があるのであれば抗うってのを基本路線に考えたほうが面白そうではある。


 滅びることがわかっているのに何もしないってのは、精神衛生上よくないしな。

 とりあえず抗う事を基本路線にするとして滅びる原因については、あとで質問することにしよう。


 性格が悪そうなこのじじいが答えてくれる可能性は低いけどね。


 三つ目は、一定のルール下で神が介入してくると言う事だ。

 この空間を作り出すことができる現状を考えても、神はかなりの力を持っていることはわかる。


 一定のルールってのがなんなのか?は質問するとして、おそらく神による介入ってのが、このモニタリングのきもであろう。


 この介入を僕がどう使うか?によって神はデータを得ようとしていると考えてもおかしくない。


(なんかゲームやアニメみたいな話だな……やばい、少し面白くなってきた。)


 他にも細かく気になるもしくは引っ掻かかるところもあったりはするが、とりあえずはまず質問して確認していこう。

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