ー開ー
悲しい話が続くのであったが、ダンプの話は少し抑揚がつきはじめる。
「どうも貧困が原因で悲しむ人間を見るのは俺には耐えられないらしくてな。そこで俺は属性書に戦闘魔法は記載されていなかったが、家庭魔法を極め応用して戦闘できるようにした。」
「凄そうに見えるけど家庭レベルって言ったら頑張って"強火"だろ?異世界ものって言ったらビームとかあんじゃねえの?」
集は少しガッカリしながら問いを投げ掛ける
「まぁ聞いてみれば大したこと無さそうに見えるだろうが、実際はこれが抜け道だったわけだ。」
「抜け道?」
少し面白そうな話に食いつく集。
「あぁ。家庭魔法を極めれば戦闘魔法よりコンパクトでより長く戦えるようになる。俺の身体能力で残りの戦力を補ってバランス良く戦う。これで俺は…おいなんだ」
下唇を少し突き出し納得がいかなそうな顔をしている集は答える。
「じゃあ戦闘魔法を極めて工夫とかしてみたら家庭魔法よか戦闘では使えるんじゃねえの?」
「そうでもないんだなそれが。話は脱線するが…いいか、個体にはそれぞれ100%属性値が与えられる。これは器みたいなものだ。この中に生涯自分が使う魔法の種類を割り振る。」
この時点で話についていけなかった。 属性値とは何なのだろうか。異世界へ入った俺にもあるのだろうか。
「俺は少年期家庭魔法で100%の内火属性15%、水属性17%を埋めた。青年期に追加で雷属性13%。この時点で俺に残っている属性値は55%だ。割り振りミスっても変更はできないから注意が必要だが何分子供だったから後から知った。」
#__i_7cdfeeb1__#
「あー意味わかんねー…」
「まぁメモでもして聞いておけ少年。続けるが、30%は風属性で20%は木属性だ。」
「…残りの5%は?」
「…これから話す。」
ー先ほどまで自慢げに話していたダンプの表情が一変したー
「戦闘ができるようになった俺は貧困地域で暴れている食料を強奪しているヤンキーどもをぶっ倒した。」
「まじかよ…でも戦闘できる程の魔法なんだから死んだりしてねえよな…?」
いきなりの魔法から戦いの話に集は少し嫌悪感を漂わせながら質問した。
「死んだ。」
はっきり答えるダンプの表情には虎のような怖さがあった。
「うっ…」
集は自分の常識とは違う世界と違うやり方に息詰まる。
「そいつらの死体を自警騎士に渡して四人目の友人が連れさらわれないようにした。」
「そう…なのか…。四人目に餌にされるはずだった人は今元気なのか?」
「さぁな。俺はもうアシュラ・タームにはいねえから分からねえよ。そこでだ。俺の目の前に服だけは綺麗な傷だらけの女が落ちてきた。こんなに優しい俺の目の前ってだけでラッキーだろ。」
「否めない。」
「そいつを助けるには光属性の魔法が必要だったが、俺は家庭魔法書しか持ち合わせていな買ったため助ける事はできなかった。」
「そいつも死ぬのか…?」
「いや?俺は諦めずに読み書きもできねぇ奴らに水をやる代わりに紙を譲ってもらって家庭魔法書を複製した。」
「おいおい、魔法書ってすっげえ分厚いってーのが鉄則だと思うんだけど」
ダンプは右腕を肩の高さまで挙げて指二本で分厚さをジェスチャーで教えた。
「げっ!?お前その量を一人でコピったのか!?」
「あぁ。手から血が出たよ。それから家庭魔法書を売った。その金で光属性の治癒魔法薄本を買って練習をした。だが大きな壁にぶち当たった。」
集は今度は静かに聞いている。
「彼女の傷を治すには光属性に特化しているような人間でないと扱えない事が分かった。彼女の体は物理的な傷だけではなく病気も患っていたため属性値を95%は光属性で埋めなければならなかった。本当にどうしようもなかった。」
集はそれでもお前の事だからどうにかするんだろうと言わんばかりの顔でダンプの顔を見つめる。
「ただ5%の光属性の魔法に一つマイナーなものがあってな。ハートスワップとバイタルスワップがあるんだが、俺はバイタルスワップという現在の自身の生命力(事故回復力)と対象の自己回復力を交換する魔法を使用した。一方的に回復できる魔法は50%からでそれまではリスクのある回復魔法が最下位に、下級光属性攻撃魔法だ。」
「なるほどな。だから特化した人しか回復係りは務まらないわけか。」
「あぁ。そんで直ぐ様俺はバイタルスワップを行い、彼女の一命をとりとめた。俺はその姿を王国の騎士団に一目置かれて本格的に戦闘について学んだ。内容は移動速度等の身体能力。身体能力の方が魔法よりも優れているみたいで俺からしたら魔法はサブでしかない。以上。条件について言うつもりはない。」
「こんだけ長々と話して肝心な条件は教えてくれないのかよ…なんか疲れたわ…」
外を見るともう夕暮れだった。信号がつかないとなれば外は真っ暗になるはずなのですぐに食料を持って帰ってこなければならない。ダンプに協力を求めるしかない。この異様な変化を遂げた世界で生きていかなくてはならないのだから。俺の最初の試練が始まった気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます