第68話 技能交換 → 新用法

 確かにタツマが僕に教えてくれた通りにすれば、この指輪の力を最大限に活かすことができる。どういうことかというと……実際にやってみたほうが早いよね。

 っとどうしようかな? 最近は槍しか使ってないからこれとこれにしてみようかな。


【技能交換(スキルトレード)】

 対象指定 「偽装1」 

 交換指定 「剣術2」

【成功】


【技能交換(スキルトレード)】

 対象指定 「看破1」 

 交換指定 「盾術3」

【成功】


 で、指輪を【鑑定】。


『騎士の指輪  【剣術】と【盾術】を使う騎士の力を秘めた指輪』


 つまりこういうこと。あるときタツマが『おまえのトレードって生物からしかできないのか?』て言い出して、僕は死体からはトレードできないから無理だと思うって言ったんだけど『死体を持ち歩いても死体のスキルは使えねぇけど、魔道具は持ってりゃスキルが使えるんだぜ? 試してみろよ』って言うから試してみたら……自分と魔道具の間のトレードが成立したんだ。


 これは凄い発見だった。だって魔道具のままだとスキルは成長しないけど、人に移し替えればそのスキルは鍛えることもできるからね。それに、魔道具にスキルをストックしておくこともできる。


 たとえば僕は【採取】とかならものすごく早く再取得できるけど、いったん取得したらなにかと交換しないと再びその早さを活かせない。でも魔道具のスキルと交換して【採取】を渡してしまえば、またすぐに【採取】を取得できる。


 リミやシルフィに渡したいスキルがあって、ふたりに交換対象のスキルがなかったりしても一度指輪にスキルを移して渡しておくことでスキルの恩恵を受けられるようになる。それに、魔道具を装備してそのスキルを使っていると感覚的にスキルを理解できるようになるためか、そのスキルを覚えやすくなる傾向もあるみたいでレアなスキルを増やせる可能性まで出てきたんだ。

 実際これに気が付いてからの僕たちの成長は、それまでよりも一気に効率がよくなった。


 あと、もうひとつ大きかったのはいろいろスキルを覚えて、いくつかスキルレベルが上がったんだけど【統率】のレベルが3になって、ものすごく有用性が増したことかな。


 うすうすそうかもとは思っていたんだけど、僕と一緒に行動するようになってからのリミとシルフィのスキルの取得速度はあきらかに早かった。たぶんだけど【統率】のスキル効果が、僕の才覚である【早熟】にまで及んでいたんだと思う。それが【統率3】になってようやく確信が持てるようになった。このスキルも普通の人が持つにはそんなに大したことはないスキルなのかも知れないけど、たくさんのスキルを持っている僕が持つことで凄いスキルになったと思う。


「どうだった? りゅーちゃん」

「うん、後で説明するけど結構いい魔道具だったよ。もう僕のスキルと交換しちゃったけど」

「へえ、よかったね!」


 いつもにこにこしているリミは、ダンジョンの中にいても陰らなくて癒されるなぁ。


「うん。じゃあ、いったん戻ろうか。シルフィよろしく頼むね」

「はい、リューマ様」


 シルフィが微笑みながら頷いて歩き出す。その後ろをリミとモフが跳ねるように追いかけて、僕は一番後ろからついていこうとして……転んだ。


「あいた!」


 く……まただ。幸い変な転び方はしなかったのでどこも痛くはないけど、いつの間にか(・・・・・・)へこんでいた床に足を取られた。


「りゅーちゃん、また?」

「そうみたい」


 そう、リミが言う通りこんなことが実はしょっちゅうあった。6階層くらいからかな? さっきまでなんともなかったし、罠も無かったはずなのに、急に足元に十数センテくらいの小さな落とし穴ができて躓いたり、コップ一杯くらいの水が誰もいないのに天井からかけられたり、小石が飛んで来たり……。

 どれも小さなものだけど、問題なのはどれだけ調べて進んでも罠を発見できないんだよね。結局そういう罠はどれもたいした被害がないから最後は無視することにしたんだけど……こういうのってストレスたまるよね。


「大丈夫ですか?」

「うん、いつものだから大丈夫。行こう」


 なんだか気味の悪い話だけど、調べてもわからないからね。ふたりに心配かけないように、気にしてないフリをしてるんだ。だいたいひっかかるのは僕だしね。


 その後はシルフィの案内でなにごともなく九階層の入口付近まで戻れた。数回の戦闘はあったけど、そっちはまったく問題ない。この入口を通り過ぎてちょっと進めばボスの部屋だから、ここから一階層の入口まで【精霊の道】を繋いでもらう。


 さて、明日はボス戦だ。部屋に戻ってスキルや武器の確認をちゃんとしておこうかな。




今回のわらしべ

『 剣術2 → 偽装1 』

『 盾術3 → 看破1 』


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