第6話 記憶 ~大翔~

俺たちは公園に来た。


 「付き合ってもー、三ヶ月だなぁ」

 「うん、だねぇ。」


 付き合ってから色々なことがあった。

 でも、どんな日々も優真と一緒だから楽しくてしかたがなかったが、今は優真と別れるきっかけになるかもしれねぇ。過去の話をする気になれた。

 過去のことなのにこの話を聞いたやつは必ず俺たちから離れていった。理由は簡単

 『そんな重過去を背負ってるやつらとどーやって関わったらいいか分からない。』


 優真なら離れていかないって分かっていても不安になる。


 「なぁ?優真」

 「ん?」

 「俺の過去、知ってるか?」

 「う、うん、禀から少し聞いて。ご、ごめん」

 「いや、謝んなくていい」

 「で、でも!大翔の口から聞きたい!!」

 「えっ!?」

 「大翔から聞くことに意味があるんだよ!」

 「そ、そーなのか?」

 「うん!」

 「じゃー内容、禀と被るかもしんねぇーけど・・・」

 「うん、大丈夫」


 俺は、ゆっくりと過去を話始めた。



俺ら兄弟は5才の時に親父に捨てられた。

今考えると仕方のない事だったかも知れない。父親は仕事をクビになり、母親は俺らを置いて家を出た。そんな日々の中で父親は一日中酒を飲み、俺らに殴る、蹴るの暴行。俺は親父から弟を守ることで精一杯だった。

この時の親父は色々荒れていたのだろう。だが、俺たちは今まで散々暴力を振るわれてきたのだそんなのわざわざ気にしてやる訳がない。


だからだろうか、父親が俺らの事を知らない町のポストの近くに置いていき「もう、家に帰ってくんじゃねぇー」と言われた時に少し嬉しさを感じたのは・・・

でも、俺らはいつか父親が迎えに来てくれるのではないか、少しの希望を持ち兄弟で寄り添いながら何日も何日も父親の来るのを待った。何日した頃だろうか、5日いや3日だったかも知れない。俺らの空腹が限界を超えた。

「お、おにぃちゃん、お腹すいたよぉー」

弟の声に力が入っていない。いつから我慢してたんだろう。

「りん、だよなぁ・・・にぃちゃん気付けなくてごめんなぁ~」

「おにぃちゃん・・・大丈夫だょ!ぼ、ぼくぅまだ、我慢できるょ」

無理して笑ってるのが手に取るようにわかった。

「りん、父さんはもう帰ってこねぇよ!だから、食べ物探しい行くぞ!」

一瞬禀の顔が歪んだのがわかった。

「えっ、お、おにぃちゃん、そ、そうだよねぇ、お父さんもう、来ないよねぇ・・・食べ物探しにぃ行こうかぁ」

禀とは双子だが、禀はずっと泣き虫だ・・・

なのに、涙をこらえて俺に笑顔を向けている。そんな禀を見て俺は強く禀を抱き締めた。

禀は大声を出して泣いてる。

 親に愛された記憶はないが禀は、優しいからどんなに殴られようが親父が大好きだったんだろう。

そんな禀を慰めて居ると、禀は寝てしまった。

禀が寝てしまうと、俺もだんだん眠気が襲ってきた。そうだ、よく考えるともう、何日も飲まず食わずだった上に寝てもいなかった。目を開けると、白色の花が沢山ある場所に居た。

もう、夢なのか現実なのかもわからなかった。けど、ずっとここには居てはいけない気がしてならなかった。俺は目の前に続いている白色の花も気になったが俺がもと来た道らしき道を全力で走って戻った。そうすると、目が覚めてやっと夢だと言う事が理解できた。何時間寝たのだろう。辺りはだんだん明るくなって行く、俺らが寝たのはいつだ?もしかしたら、何日も寝ていたのかもしれない。ふと、隣を見ると禀が寝ていた。禀は何度か起きたかも知れない、禀を起こして聞いてみよう。

「りん、りん起きろ!起きろよ!」

禀を何度読んでも返事がないどころが起きる気配するら感じない。なにかわからない不安がよぎった。それでも何度も禀を呼び続けた。

「りん!りん!おい!起きろよ!食べ物探しに行かないと・・・」

禀が起きない事が不安で不安でしかなかった俺はついに泣いてしまった。それでも泣きなから禀を呼び続けるが返事がない。

「りん!りん!起きてよ!俺一人は嫌だよ!」

日が昇りきり暖かくなってきた頃やっと病院に連れて行ったら助けてくれるかも知れないと思いついた。

それで、禀を背中に背負い死物狂いで歩き続けた。何時間歩き続けたのだろうか?疲れ果てて倒れそうになった時、病院のマーク、正式いうと「十字架」のマークを見つけ俺はそこの扉を必死に叩き続けた。

「だ、誰か居ませんか」

「お、弟が、大変なんです」

「誰かぁ助けてよ」

何度か扉を叩いて居ると、中から優しそうなおじさんが出てきた。

「はいはーい、おっ?どーしたんだい?」

そんな声を掛けられた言葉に被さるように大泣きしながら

「り、りんが目を、目をさまさいの!!おじさんどしょーう!!」

そんなことを泣きながら何度も言った気がする。

「わ、わかった。禀くんをベッドに寝かせてあげるから、おじさんに1回渡してくれるかなぁ?」

「えっ!?お、おじさんり、りんに何をするの?」

こんな甘えた事いってる場合じゃないのにこの時は禀が奪われるかと思った。

「大丈夫だよ!りんくんをいじめたりなんかしないから」

「ほ、ほんと?父さん見たいに殴らない?」

「あぁ殴りやしないよ。だから、りんくんをおじさんに預けてくれないかなぁー?」

その言葉を信じることにした。落ち着いた容姿に説得力があったのかも知れない。

「う、うん、けどねぇ、おじさんにりんに俺も付いてっていい?」

「もちろんいいとも!それに、君の診察もしたいしね」

「えっ?おじさん、ぼ、ぼくはどこも悪くないから!!だから、だから、早く!り、りんを!!!」

こんな会話をしていたら視界が真っ暗になった。

「お、おい!君?大丈夫か?」


目を覚ましたら禀が一緒のベッドで寝ていた。色々な事を思い出したら不安な事が込み上げて来て、また泣いてしまった。

そしたら、おじさんが駆けつけてくれた。そして、俺を抱き締めてくれた。

「大丈夫、大丈夫だよ」

そんな優しい言葉を掛けてくれた。

「う、ぅん、お、ぉじさん!りんは?りんは大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ、りんくんはちょっと疲れたみたいでね。そのうちりんくんも起きるよ」

この言葉で安心した。

「それより君の名前はなんて言うの?おじさんはねぇー大津貝しげつぐ」

「ぇっ、えっとー、僕は大翔」

「ひろとくんね!」

「しげつぐ?さん?」

「おじさんのことは『しげ』でいいよ!」

「わ、わかった。しげさん!ぼく、お腹空いたよ・・・」

安心したらお腹が空いていたことにきずいた。

「おー、お腹空いたのか!!元気になった証拠だよ!」

「う、うん!」

そういった後、しげさんの顔が一瞬歪んだ気がする。

しげさんが作ってくれた特性オムライスを食べていたら、しげさんの顔が一瞬歪んでいた事なんでどうでもよくなっていた。

 「しげさん!僕こんなおいしい料理食べたことないよ!」

 「おー!そう言ってくれると嬉しいよ。」


 

 「ごちそうさまでした!!」

 「ちゃんとたべれたね!えらい!えらい!」

 ご飯を残さず食べたたげなのに褒められた?そんな些細なことでほめられ疑問に思ったが、すごくうれしかった。


 「ところで、大翔くん」

 「なに?しげさん」

 「さっき、僕に『父さんみたいに殴らない』って聞いてきたけどお父さんになんかされてたの?」

 「あっ、うん・・・僕らの父さん一日中お酒のんで殴ったり蹴ったりしてきたの」

 しげさんに俺たちの事を話した。

 しげさんは俺の話を黙って聞いて、涙まで流してくれた。

 「だから、身体にアザがおおかったのか」

 「し、じけさん?」

 「いや、なんでもないよ。大翔よく頑張ったね。」

 そう、しげさんは言い俺を抱き締めた。







過去を話し終えた俺は、不安に教われていた。 

 また、俺一人になるのか。なんか、こんなの慣れてるのにつらいなぁ。優真だからかなぁ。


 「ひ、大翔?」


 えっ!?優真なんでお前泣いてんだよ。


 「な、なんでお前泣いてんだよ!」

 「大翔に言われないよ!大翔だって泣いてるくせに!」


 俺は無意識のうちに泣いていたのだ。

 ダサすぎる。なんで、優真の前だとこう弱いところばかり見せてしまうんだろう。


 「な、泣いてねぇよ」

 「ないてるじゃん!ほら!」


 そう言いながら、優真は俺の涙を拭った。


 「大翔、僕は過去の大翔になにもしてあげられないことが悔しくてたまらない。」

 「えっ!?」

 「ぼ、僕は、この話禀から聞いたとき施設に入ってたんだろうなぁって思ってた。でも、大翔からちゃんと話聞いたら全く違くて、えっとー、えっとー」

 「うん、ゆっくりでいいから、優真の思ったことちゃんと聞かせてくれ」


 そんなことを口で言っても、不安で仕方ない。涙が溢れて止まらない。

 優真、たのむから一人にしないでくれ。


 「う、うん」

 「それで?」

 「えっとー、僕も人の冷たさはしってるから、辛さが少しはわかる。辛かったよね、禀のことよく守ったね。本当は自分がいきるのでせーいっぱいだったのに。よく頑張った。大翔。」


 泣きながらそーいって、優真が俺を抱き締めた。


 「大翔!こんどは僕が守るから。大翔を一人になんてさせない。」

 「えっ、あぁ。なんで、お前はそんな誘うようないい方するだよ」


         『チュッ』


 短いキスだけど二人の想いがこもった。暖かいキス


 そー言えば、優真が言ってた『僕も人の冷たさはしってるから、辛さが少しはわかる。』

 ってのはどーいう意味だ?


 「なぁ、優真?さっき言ってた『僕も人の冷たさはしってるから、辛さが少しはわかる。』ってのはどーいう意味だよ。」

 「あー、あれはね・・・気にしなくていいよ!」


 いや、その反応は気になるだろ。


 「なぁ、優真。俺はお前の全部が欲しくてたまらない。俺の知らない優真がいるだなんて知りたくもねぇー、でも、悲しかったとか、辛かった過去があんなら、それは、しってなきゃいけねぇって思ってる。辛いなら俺が一緒に背負ってるやるから言えよ!」

 「なんでー、そんな上からかなぁー(笑)僕の話聞いてもなにも面白くないと思うよ。それでもいいなら話してもいいけど」

 「あぁ、面白くなくてもいい。次はお前の番だ」

 「うん、面白くなくていいなら・・・少しままって色々整理するから!」

 「あぁ」

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