40 私たちのつながり。星と、君の思い。

 私たちのつながり。


 星と、君の思い。


 夏休みが終わって、二学期になると、水瀬くんはみんなに自分の引越しのことを、担任の島先生に促されるようにして、発表した。


 みんなその発表を聞いて、とても驚いていた。

 水瀬くんの引越しのことを事前に知っていたのは、三年一組の教室の中では、水瀬くんと担任の島先生と、それからほかの生徒たちの中では、雨一人だけだった。

 雨と水瀬くんはそれから、図書室でよく一緒に本を読むようになった。受験勉強も一緒にしたし、あと、学校から帰るときも、よく一緒に帰るようになった。

 雨が天文部の部活動に顔を出すときには、水瀬くんも一緒に天文部の部室にまでやってきた。

 雨はなるべく多くの時間を、水瀬守くんと過ごすようになった。

 二学期。

 三学期。冬休み。

 ……そして、年が明けて、お正月。

 大晦日には、雨は雪と一緒に遠野神社で新年を迎える神楽舞を踊った。その神様を迎える儀式には、多くの観光客や街の人たちに混ざって、水瀬くんもお父さんと一緒に見学にきてくれた。

 そのことが、雨はすごく嬉しかった。

 その年の神楽舞は、とてもできが良かったと、雨はいろんな人から褒められた。

 お父さんも、姉の雪も、雨ももう一人前だね、と嬉しそうな顔で、雨にそう言ってくれた。


 高校受験において、雨は志望校の地元の高等学校の受験に合格をした。愛や瞳、それから森川くんや東山くん、それに水瀬くんも、それぞれの志望校に合格をした。

 高校は雨と瞳は一緒だったけど、森川くんと東山くん、そして親友の愛はそれぞれ違う高校だった。

 遠くの街に引越しをする、水瀬くんだけじゃない。

 ……これからみんな、こうやって少しずつ、どこか遠いところにばらばらになって行ってしまうのかもしれない。

 高校受験の合格を記念して、もう一度、みんなで行った山の上の天体観測の日の夜に、満天の冬の星空を眺めながら、……それから、楽しそうにわいわいとはしゃいでる、愛や瞳、森川くん、東山くん、……そして自分の隣に座って星を見ている水瀬くんのことを見て、……今こうして、中学校を卒業する年を迎えて、私たちそれぞれの、みんなの物語が、少しずつ、だけど確実に動き出そうとしているのかもしれない。

 ……と、そんなことを雨は思った。

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