8
瞳はそのお昼休みの時間に、同じクラスの愛と、それから水瀬くんから天体観測の約束を了承してもらった。
瞳は授業の始まりを告げるチャイムの音が鳴っている間に、雨を見て、「どうだ」と言う満足そうな顔をして、それから自分の席に着席をした。
愛はそんな瞳のことを、少し呆れた表情で見ていた。
水瀬くんはどうしてるのかな? と思って雨が水瀬くんの席を見ると(それは窓際の雨の二つ前の席だった)水瀬くんはじっと、窓の外に降る雨の姿を頬杖をついて、ぼんやりと見つめていた。
「よし。じゃあ、雨。これから天文部に行こう」
放課後に瞳は雨にそう言った。
「え? なんで?」
帰り支度を終えた雨は言う。
「だから、天体観測に行くための準備と、それからその日の行動計画をきちんとたてるためだって」
瞳はそう言っている間に、すでに雨の手を握って歩き出している。
雨が助けを求めるような目で愛を見ると、愛は「頑張って」とでも言いたげな顔をして、にっこりと笑って雨を見ると、それから小さく手を振って、雨に今日のさようならをして、そのまま教室を一人で出て行った。
雨も瞳に連れられて、教室を出て、そのまま部活動の部室が集まっている旧校舎まで移動をして、そこの三階にある天文部の部室の前まで移動をした。
「雨はあんまりこっちにはこないんだっけ?」
天文部という文字の書かれている古びた木製のドアの前で瞳は言う。
「うん。あんまり」
雨は言う。
雨はどの部室にも属していない、いわゆる帰宅部の一人だった。
瞳は陸上部に所属しているため、旧校舎にはよく来るらしい。陸上部の部室は旧校舎の一階にあった。
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