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 真昼はそれから、そのまま神楽坂にある自然公園の中で、秋野四葉と別れた。

 真昼がそうしたいと言ったのだ。

 四葉は真昼のことを心配そうな目でずっと見ていたのだけど、「わかった」と言って、真昼を残して、先に小さな小屋のような休憩所をあとにした。


 真昼は雨の中に消えていく、透明な傘をさした四葉の後ろ姿を見送った。


「はー」

 それから真昼はその小さな休憩所をあとにして、一人で雨の降り続く大きな自然公園の中を散歩した。

 この自然公園『雨の降る森』に、真昼はよく足を運んでいた。

 真昼はこの場所が大好きだった。


 でも、実際にこんなに大雨が降っているときに、『雨の降る森』の中を歩いたことは今日が初めてのことだった。(真昼は基本、晴れ女だった)


「綺麗だな。いつ見ても綺麗」

 真昼は雨降りの池を橋を渡りながら見て、そう独り言を言った。


 それから真昼は大きな休憩所まで言って、そこにある自動販売機で缶コーヒーを買って飲んだ。

 久しぶりに飲んだ缶コーヒーはすごく美味しかった。


「ふー。……よし」

 なんとか大丈夫そうだ。

 早くいつもの自分に戻らないと。

 それで、大学で先輩に会って、先輩、あのときは本当にごめんなさい。って言って、先輩と早く仲直りをしないと。

(それで、もし秋野先輩が詩織さんに告白をしたり、二人が付き合ったりするのなら、その応援をしたり、……それから、いつも笑っていられるように、今から笑顔の練習をしないといけないな。今日みたいに失敗しないように。子供みたいに泣かないように)


 そんなことを思って真昼はにっこりと笑った。


「あれ? もしかして村上さん?」

 真昼がそんな風に突然声をかけられたのはそんなときだった。

 聞き覚えのない男の人の声。

 真昼が後ろを振り向くと、そこに一人の若い(きっと私と同じ大学生だろう)男の人が立っていた。


「あ、その顔は僕のこと覚えてないね。ほら、高校で一緒だった柿本だよ。柿本潤(かきもとじゅん)。どう? 思い出した?」

 自分の顔を指差しながら、にっこりと笑って潤は言った。

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