第11話正義の意味
初めて名を呼ばれた
「そりゃ簡単だ。悪党を懲らしめるのが正義だ。」
「あぁ、そうだな。確かにそうだよ。じゃあ、ツカサは二ーアを切れるか?それが正義であるなら。」
「?」
「私にはできなかった。」
「話が見えないな」
「私はね半年前まで彼女を殺す気でいたのだよ。正義のためにね。」
「うん?」
モガミの目は依然としてドアを見つめている
まるで、そこには無い”なにか”を見るように
「ニーアが来たな、この話は後だ。」
トテトテと足音が聞こえる
「お、お待たせ」
「あぁ、そういえばご飯がまだだな。ニーア食事にしよう。」
机に置かれたのはパンが3つそして中央には先ほど購入したと思われるカサゴのような大きな根魚が丸焼きに調理されている
気のせいかニーアの口角が上がっている
(猫っぽいから魚が好きなのかな...?後で猫じゃらしやってみようかな)
「いただきます。」
「?」
「?」
「え?」
どうやらこの世界には食事の前にあいさつをする習慣が無いらしい
まぁ、確かに重要性は低いもんな
「ツカサの地元は変わってるな。まぁでも悪いものではないな。」
「う、うん。いいと、おもうよ?」
完全に、不思議というよりは奇妙という目で見られている
感謝は大事
でもそれはエゴなのかもしれない。食材としては感謝されたところで...という感じだろう
「じゃあ...いい?」
「うん」
「「「いただきます。」」」
ニーアが真っ先に魚を平らげたため、ネコ科に近いという考えはあながち間違っていないようだ
口元に何度も魚の身や骨をくっつけモガミがせわしなく取っていたのでモガミは魚を食べていないのかもしれない
「おいしかった」
「そうですか。お口に合ったようで。」
「もが、モガミ!また、さかなお願いしていい?」
「ええ、もちろん。また明日買ってきますね。」
「-!!」
明らかにうれしそうだ
コレは早急に猫じゃらしの製作が必要かもしれない
「で、聞くのが遅れすぎたんだが。旅は何が目的なの?」
「魔王討伐。及び逃亡ですかね。」
「うん。ん?とうぼう?」
「はい。」
「なにから?」
「国です。」
「なるほど?」
「はい。」
(どうやら会話は完結したらしいが...ニーアのために魔王を討伐すれば差別が減るのはわかる。逃亡...?この騎士なんかやらかしたな?)
魔王関連の話題が出るとどこか悲しそうな申し訳なさそうなニーアが視界に入る
あまり話さないほうがいいのかもしれないが必要な情報だ
「では、魔物が沸いているという洞窟に今日は向かいます。」
「え?人助けもするの?」
「そんなわけないでしょう。魔物が沸いているということは生み出している上位種がいるということです。そいつをたたいて魔王の居所を吐かせて殺します。」
「殺すのね...」
「現状、魔王の位置を知るものは世界にいません。なので地道に探すしかないのです。」
「ふーん、そうなのか。でもこの世界に騎士がいるならそいつらが勝手に調べて討伐にいってくれるんじゃないの?」
「いえ、この国及び多くの諸国は魔王討伐をあきらめ魔王の器壊し、つまり最有力とされる魔王と似た容姿を持つ者を殺害して回っています。」
「え?つまりニーアは...」
「当然、殺害対象です。しかし、殺害の権限を持っているのは王国の騎士と一部の冒険者だけなのです。」
「ん?何でだ。みんなでやったほうが効率がいいのに」
「それは簡単です。」
「...ん。」
ボッと火が上がる
「ご、ごめん...」
「おわっ!!」
「魔王の器候補は、なぜかみな魔力が高く戦闘向きなのです。なので敵対されないように見つけ次第、逃がさず確実に仕留められるものしか権限を有していません。」
「その様子じゃ魔王候補の殺害命令は公じゃないのか」
「はい。ですがやはり気味悪がる者や魔物、魔族に身内を殺されたものからは恨みを買いますね。」
ニーアは火を出して以降、うつむいたままだ
それに反してモガミは気を使わずに淡々と事実を教えてくれる
(まぁ、たしかにここで誤魔化しや曖昧な表現は今後に響くから避けるか)
「大体わかった。ありがとう」
「はい。」
「じゃ、じゃあ改めてよろしくお願いします」
町を出る間ものすごい視線が降ってきた
慣れてしまっている二人は何も感じていないがぬ自覚のうちにストレスを抱えていてもなんら不思議ではない
「......」
笑えない。が正直な感想であった
洞窟があるところには馬車に乗せてもらおう。そういうと深いローブを取り出し、渡されたローブをまとい彼女は耳を窮屈そうに仕舞った
無駄で意味のないこととわかっていても苛立ってしまう
この子の常識を非常識に。そんな感情で心が埋め尽くされてしまう
このさまを正義というなら、悪党はあまりにも無力だ
「お、のってくかい?」
馬車を引く老人が声をかけてくれる
「お願いしても良いですかな?3人なのですが....」
「いいよ。そんなもん大差ないひとり300リロでどうだい」
「おねがいします。」
モガミは笑顔で交渉していた
あれ、初めて笑顔見たな...
(可愛いじゃん...)
絶対に伝えまいと考える横顔を不思議そうにニーアが眺めていた
「で、ローブのお譲ちゃんはどうしたんだい?」
「すみません。はやり病になってしまって...あまり姿を見られたくないのです。」
「おー。そいつは気の毒に。年頃だってのにかわいそうだね...」
「い、いえ。だ、大丈夫ですのでお気になさらず...」
「そうかい?お譲ちゃんは200リロにしておくよ」
「ありがとうございます。」
お礼を言い笑顔を見せるモガミ
「さぁ、ついたよ。ビストのお嬢ちゃんこれ持ってきな」
「え?はい?」
小さな飴玉が2つ手渡された
しっかり手に握られたことを確認すると老人はすぐにいってしまった。
「ニーアいくぞー」
先に進んでいたツカサが少し遠くで叫ぶ
「あ!う、うん!」
(なんであのおじいさん私がビストって...)
「ニーアー?」
「あ、はいぃー...」
ニーアは足早に走り始めた
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