第四百五十話 最後の最後で その三


「まだ……倒れ……られませんわ……」

 

 あんなに元気に走ってた美咲が……もう地を這うレベルに……。

 今更仕事かウイルスめ。

 

「和泉」

「なーに♡」

「外にGがいるから、それ排除させてくれ」

「うん♡」

 

 本当ならスナイパーライフルとかの方が敵を倒すのには最適なんだが……ないもんは仕方ねえ。

 

「死ねえ!」

 

 今回は容赦なしだ。

 殺しはしねえが、今度こそ眠ってもらう!

 

 私は三発引き金を引く。

 

「ぐおっ! あっ! ぎゃあ!」

 

 もう一回だけ当たれ!

 

「いやあああああああああああッ!!」

 

 すかさずケータイを取り出し。

 119。

 

「もしもし救急です。例のウイルス患者が外で倒れてるので、回収ヨロです。場所は……」

 

※※※

 

ほどなくして、救急車が現れる。

 

「良かった。これで解決ですね!」

 

 と某モナド使いっぽく話す私。

 

「おい貧乳の銃士! 解決しとらんぞ!」

「……は?」

 

 私は部屋の外に出る。

 そこでは江代と、乗組員が話をしていた。

 

「えっと、外に誰もいないんですがどこですか? 悪戯なら警察呼びますよ」

「通報は吾ではない! そこの貧乳だ!」

「貴女ですか?」

「は……はい。いなかったんですか?」

「ええ。確認しましたが、外には誰の姿もありません。悪戯なら警察を呼ばざるを得ないんですが」

 

 あいつ……。

 これじゃ十一章途中の出来事の繰り返しじゃねえか。

 

「はあ……」

「あの?」

「あーすみません。間違えました。中にいますよ、ほら」

 

 すり替えちまえ……。

 

「貧乳の銃士、貴様!」

 

 警察に捕まるのだけは勘弁だ。

 この状況でそれが嫌なら……こうするしかねえよな。

 

「ゑ? ゑ?」

「その子なんだね」

「はいそうです! この子急に具合が悪くなったみたいなので運んでくださーい!」

「わ、分かりました!」

 

 けっ、馬鹿で良かったぜ。

 

「こやつ絶対後に罪が下るな……」

 

※※※

 

 和泉を替え玉に、私達は難を逃れた。

 

「何とか誤魔化せてよかったな」

「ふっ……吾らはまた大事なものを失ったのではないだろうか……」

 

 闇の騎士が正義で悩むってどゆことよ。

 

「貴様勘違いしてないか?」

「いやお前の厨二趣味を細かく理解なんざしてねえ」

 

 理解するだけ無駄だろうし。

 

「ともかくとんでもない事をしたな貴様……」

「良いか江代」

「……なんだ?」

「世の中、大事な人間はいるし、今の行動は道徳的に間違っている。だけどな」

「?」

 

「良いじゃねえか。あいつらだって散々迷惑かけたんだから」

 

「吾が直々に裁きを下すべきか?」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る