第百四十話 ゲーム作りのバイト その一


 金曜日の夜。

 

「あー……バイト無いのか……」

 

 明日から土日月と三連休なのだが、バイトする日が一日もない。

 金が発生しない上に、京極先輩にも会えない。

 

「死のうかなあ……」

 

 馬鹿な姉と厨二な妹しかいない休日……想像するだけであの世に逝きたくなる。

 首でも吊って……。

 

『愚かな貧乳め!』

 

「ん……?」

 

 てか着信音……江代か……?

 ケータイは私のだが……。

 

「あとで一発どついとくか……」

 

 メッセージを見る。

 

『浅井初、明日この場所に来て私を手伝え』

 

※※※

 

 こんな怪しいメール見て誰が行くかって?

 

「……」

 

 私だ。

 差出人不明で終わらせる程、浅井家の人間を舐めてはいけない。

 もし誘拐とかであったならば……そいつを撃つ。

 

※※※

 

「失礼するぜ……」

 

 カタカタ、という音。

 その音の方向にいたのは……。

 

「久しぶりね」

「お前かよ」

 

 白子優奈だ。

 

「ここで何してんの?」

「見ての通り」

「一応これ文字媒体だからさ、何してるかだけでも教えてやってくれ」

「ゲーム作ってる」

 

 いやマジもんの〇黎斗じゃねえか。

 

「んで、何で呼んだ? てか何で私のメルアド知ってんの?」

「淀子に倒された後淀子をストーキングしたのよ」

「おう」

「その時に君の家のコンピューターにハッキングして、君達の個人データ盗んだから」

「そっか……」

 

 ……は?

 

「犯罪じゃねえか」

「バレなきゃ犯罪じゃないわよ」

「今の台詞録音しとけば良かった」

「したら生かしておかないわよ」

 

 しまったこいつ変身出来るんだったわ。

 

※※※

 

「んで何すれば良いんだ?」

「まずこれに着替えて?」

 

 渡されたのは作業着的な奴だ。

 

「分かった」

 

 数分後。

 

「着替えたぞー」

「じゃあ一応お金も渡しておくわね」

「お金?」

「食費よ。これからしてもらうのは、私の助手」

「助手?」

「ここにプログラムコードを手書きで書いた用紙があるから、そっちのパソコンにこれ全部打ち込んで」

「はあ……」

「あ、因みにここに泊まってもらうから」

「まじか。まあ面白そうだし良いか」

「言っとくけど……徹夜は覚悟しなさいね」

 

 あのネタをやるつもりなら死ぬのはお前だけどな。

 

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