第七十八話 童貞医を救え! その三


「え、何? 私?」

「そうだ姉さん。この馬鹿医者の面倒見てくれ」

「あのさ、ちょっとここで作者に説教したいんだけど良いわね?」

「はあ?」

「私って一応、この作品のメインヒロインの筈なのよ」

「おう」

「で、スタンダードなボケは私に任されているわけよ」

「おう」

「……なんで」

「おう」

「なぁんで九話も出番無かったのよォォォォォォッ!」

 

 あ、忘れてた。

 

「忘れてたって何よ! 私無しで浅井三姉妹やるとか、どう考えても頭おかしいわよね!?」

「ま、まあまあ。私なんてこの章で江代に主人公取られた回とかあるから、そう叫ぶ事は

「あるわよォォォォッ! アンタはどうでも良いけど、私いない時のアンタなんてただのボケじゃない! 私がいないせいでアンタボケまくりじゃない!」

「あ、そういやそうだな」

「しかも久しぶりに登場して何やらされるかと思いきや、こんな童貞の面倒を見ろって!? 中島〇人連れてきなさいよォォォォォォッ!」

「わ、分かった分かった……ってアレ?」

「ん?」

「今カンペ見せられたんだけどさ、これやんなかったらメインヒロイン降板だってさ」

「はあ!? 作者は私に殺されたいのかしら!?」

 

(戦っても良いけど多分お前死ぬぞ)

 

「さ、流石に作者には勝てないわね。しかも作者死んだらこの小説終わっちゃうし……。良いわよ。私をそのクソ童貞に会わせて」

 

※※※

 

「てわけで、姉さん連れて来たから、あとはこいつに全部教わって」

「は、はあ」

 

 よーし、これでやっと解放された。

 さて、バイトに行こう。

 

※※※(淀子side)

 

「じゃあ、まずは模擬デートに行くわよ」

「は、はい」

 

思った以上に童貞臭いわね。しかも私を見ようとしないし。

 

「何きょどってんのよ。女といる時は、女だけを見なさい? 良いわね?」

「は、はいッ!」

「女の子とデートするの、初めて?」

「あの、俺一応童貞なんだけど」

「話かみ合ってないわよ。初めてかどうか聞いてるのよ」

「は、初めてです!」

「色々教えて、あ、げ、る❤」

「は、はい!」

 

 ひゃはー! ちょろい、ちょろすぎィィィィッ! 女にこう言われただけで顔真っ赤にするとか。本当に童貞って単純で助かるわあ。

 

「ところで淀子さん。どこに行くんですか?」

「まずはそうね、買い物よ」

 

 あー。これはマイナス一ね。察し悪すぎてマジ最悪。よくこれで女と付き合おうとか考えるよね。初の優しさに反吐が出るレベルよ。

 

「でも買い物の前に、一緒にして欲しい事があるのよ……」

「え?」

 

※※※

 

「うぎゃあァァァァァァッ!」

「痛い痛い死ぬゥゥゥゥゥッ!」

「お金頂戴❤」

 

 いつやっても楽しいわね。カツアゲ。

 

「……あの、淀子さん? 何をしてるんですか?」

「見れば分かる通り、カツアゲよ。私今お金ないから」

「……あ、そう……」

 

 初と言い、この童貞と言い、なんで私がカツアゲするとこうなるのかしら。本当に訳が分からないわッ!

 

「うわあああああッ! 俺の俺がァァァァァァッ!」

「ほらほら~。早くちょ~だーい?」

「いやあァァァァァァァッ!」

 

「ちょ、超帰りてえ……」

 

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