#祭踊出店金魚夜浴衣を使わずに悲しい夏祭りを書く

 ぶら下がった提灯の上に、緑の銀杏と火薬臭い白煙。

 人の流れはごった返して、繋いだ手の先の背中さえ追えない。

 白く濁った空を見上げていると、ドンっと肩が激しくぶつかった。

 指が解けて、私は後ろに流される。

「パパっ」

 最後に見たのは、誰かの鞄から財布を抜き取る、父の指先だった。

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