ふしぎなくすり騒動記・3

「やあ、何をしているんだい?」


 中庭に出てちびルーグと遊んでいると、爽やかに輝きを放つ赤髪のイケメン……隣国のラグード王子がやってきた。


「なんだこのまぶしいやつは」

「あはは、よく言われるよ。君は誰だい? なんだかマオルーグによく似ているけど……」


 うん、やっぱそうなるよな。

 国家の一大事ってほどじゃないからバレても別に問題ないか?


「実はこれ、本人なんだよ……魔法薬でこうなったらしくて」

「え、もしかしてマージェス王子が絡んでいたり?」


 なんで即結びつくんだよ常習犯かよ!?


「こないだ俺も変な薬もらったんだけど、飲んだら声がものすごく高くなっちゃってさー。参ったよハハッ」

「お、おう……せめて毒味とかしてもらおうな?」


 なんでもないようにけらけら笑ってるけど友好国とはいえ他国の人間に怪しげな薬もらって普通に飲むなよ、一国の王子。


「えーと、明日には元に戻るらしいこと言ってたけど、中身もすっかりお子様になっちまったからこのまま放置もできなくて」

「そうか! 俺、子供と遊ぶのは好きだよ!」


 任せてくれと言わんばかりに頼もしく胸を叩く王子。

 確かに子供好きそうというか、いろいろ分け隔てないのがラグード王子の魅力だよなあと思う。


「マオルーグくん!」

「む、なんだ?」


 ラグード王子はにこにこ笑いながら、マオルーグの足をがっしり掴み、抱える。

 そして笑顔のままその場で激しく回転、マオルーグを振り回す!


「いくよ! クリムゾンタイフーーーーン!」

「ぎゃあああああああ!」

「うわあああああああ!?」


 お、お子様を全力でブン回すなーーーー!

 慌てて止めるとちびルーグは白目をむいてぐったりしていた。


「か、川が見えたぞ……その向こうに手を振る魔物たちが……」

「それたぶん見えちゃいけないやつ!」


 ちびルーグをスカルグに預けると俺はラグードを睨む。


「ラグード、めっ!」

「す、すまない……大喜びする子もいるんだけどな」

「危ないから加減しろ!」


 叱られた王子はしょぼんと頭を垂れ、気のせいか同様に垂れた犬の耳尻尾も見えるような……いや、コイツの前世はドラゴンだけどな。


「なんだこの常に全力な大型犬みたいなヤツは!」

「的確で返す言葉もねーけど一応これでも隣の国の王子様だぞ」

「い、一応って……ユーシア姫、俺にだいぶ遠慮なくなってきたよね……いや嬉しいけど」


 苦笑いをするラグード王子と俺の顔をじっと見て、ふむ、と考え込むちびルーグ。


「となりの国の王子……もしかしてキサマら、コンヤクシャなのか? セーリャクケッコンなのか?」

「こっ!?」


 突然の爆弾に全員が目を丸くする。

 このちびっこ、どこでそんな言葉を覚えてきたんだ!?


「別に婚約者とかじゃないぞ。リンネとリオナットはそんなことしなくてももうだいぶ仲いいからな」

「俺は別に婚約してもいいけど」

「えっ」

「はは、冗談だよ。君にはもういいひとがいるもんね?」


 おい、誰のことだそりゃ。

 ラグードに意味深なウインクを向けられ、ちびルーグは首を傾げた。

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