南港追撃

南港追撃編 強行

『ふんふんふふーん』

乙姫が曲に乗りながら、助手席の収納ボックスを開ける。


『これは!』

乙姫が尻尾に巻き付けたのは緊急脱出用のハンマーだった。


『河童の皿に使えますね』

助手席へ置いた。


『今持ってる武器は小太刀ですね。』

尻尾で犬神のふところを指し示す。


『筋肉と腱を強化し、金剛力をもたらします。

しかし骨までは強化されませんので骨折に注意してください。』


犬神は例の甲冑を着てこなかったことを少し後悔した。

「そういえばスマホを梅田に忘れたままだ。」


『ご家族が心配してますか?』


「一人暮らしだったし、勤務先は伝えてないが、

安否確認のメールくらい入ってるかもしれん。」


『この件が終わったら私がこっそり取ってきましょう。』


「いや、実家の電話番号は覚えているから後でかけてみる。

取りに行くのはその後でいいし、そのうち警察が回収するだろう。」


話している内に南港へ着いた。

コスモタワー展望台を目指す。


ただっ広いコイン駐車場に車を止めて、

緊急脱出ハンマーを持って外に出た。


遠くにちらほら河童がうろついている。

急いでコスモタワーへ入った。


エレベータ、エスカレータを使って展望台へ。

誰とも出会うことは無かった。


望遠鏡を使って式紙を探す。


式紙は紙でできた人形をしている。

少し沖で停止中の貨物船、上空をひらひら飛んでいるのを発見した。


「見つけたが、近づく手段がないな」


『想定内です。

そのへんの船を強硬手段で奪いましょう。

手頃な小型船は停泊してませんか?』


岸壁をみて回るとよさそうな船が見つかった。

急いでコスモタワーを後にする。


『小太刀を握ってください。早く走れます。』


犬神は小太刀を右手で持った。

ハンマーはふところへ仕舞い、左手には何も持たないことにした。


思い切り走りだす。

車より早い程度のスピードで小型船へたどり着いた。


飛び乗って、船員のひとりに小太刀を突き付けた。


「この船で行ってもらいたいところがある!」

他の船員は突然の事に固まっていた。


「船長は?運転出来るもの以外は降りてくれ!」

一番年配の男が前に出た。


人質を解放し、船長以外が降りた。


「少し沖にある貨物船に化け物が乗っているんで討伐したい。

とりあえず出発してくれ。」


『従わないと痛い目を見るぞ!』

乙姫が竜の落とし子姿を現し、男の声で脅した。

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