大阪梅地下編6 剣士犬塚と村雨

血みどろの男が気になり、

犬神真人は署内へ戻った。


パトカーには婦警が居て、男を介抱していた。


「刀を握らせてくれ」

男が犬神に言った。

「助かりました」

犬神は刀を返すと、捨ててしまった鞘を探した。


男は傷だらけで特に額の切り傷は骨に達していそうに見える。


しかし刀を握った途端に、傷がみるみるふさがっていく。

十秒ほどで完治してしまった。

婦警は少し驚いたが、もはや何でもありな世の中なのであった。


男が名乗る。

「私は犬塚信乃(いぬづかしの)と言います。赤ん坊の保護者です。」

婦警も名乗る。

「浜路正月(はまじむつき)です。」


「急いで大阪城に向かいたいのだが、、、」

「他のパトカーで送りましょうか?」

どう考えても、男に付いていったほうが生存率は高そうなのだ。

後に夫婦となる二人の相性は良い。


犬神が鞘を拾って合流する。


パトカーは浜路が運転、助手席に犬塚、

後部座席に赤ん坊(伏姫)を抱いた犬神が乗った。


浜路はサイレンを流しながら、パトカーをがっつり急発進させる。

当然のように信号は無視。

明かなスピード違反運転なので、犬塚と犬神は事故を起こさないか、

ひやひやしながら無言で周囲を見ている。


大川を渡った辺りで、鬼が後ろから走ってきているのが見えた。


鬼の数は10体以上。

時速100kmにスピードを上げて、なんとか距離が保てた。


左に大阪城を見ながら左折するタイミングを計っていると、

先頭の鬼が倒れた。

続々と続く鬼たちも転んで距離が離れる。


犬神は倒れた鬼に舞い降りる人影を見たような気がした。


パトカーは大阪府警本部の裏を左折し、大阪城へ直進した。

公園沿いにパトカーを止めると、犬塚が下りて堀へ向かう。

犬神と浜路も後に続いた。


犬塚と伏姫はなんともないが、犬神と浜路は終始びくびくしている。

鬼の大群はかなりの衝撃があった。

急がなければ、追いつかれたら終わりである。


犬塚が堀に刀をかざすと堀の水が霧となった。

堀の底から階段が伸びて来る。


「ここから下って城内で籠城しててくれ。俺がここで守る」

犬塚の案内に従い、犬神と浜路は階段を駆け下りていった。

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