第6話 冒険者はいなかった

 「あはは。ぼう何とかってなんだよ」


 アベラさんは大笑い。


 「アルケミターって言いたかったのかしら? ごめんね。能力もだけど、習うのにお金がかかるのよ」


 「………」


 いや、そっちじゃないんだけどな?


 「あの、二人はアルケミターじゃないの?」


 「二人は違うわよ。ここは、ハンターの館って言って、彼らはモンスターハンターなの。モンスターをやっつける仕事」


 「え!? モンスターハンター!?」


 冒険者じゃないの? ここではそう言わないの? だから通じなかったのか……。

 でも、冒険者と違ってモンスターハンターって言うぐらいだからモンスターを倒すだけの仕事だよね?


 「あと、ここにはアイテムハンターとトレジャーハンターという職もあるわ」


 「え? どう違うの?」


 「アイテムハンターは、必要なアイテムを採ってくる仕事。薬草とかね。トレジャーハンターは、遺跡に行って発掘するのが仕事。トレジャーハンターは、モンスターハンターと同じぐらい危険な仕事よ」


 わかりやすくお嬢が説明してくれた。


 「家に帰れないって言うのなら、アイテムハンターになってここで稼ぐか? その日暮らしになるけどな。薬草の知識がないと採取も大変だが。でもさっきみたいな危険な場所には行かなくていいから命の危険は少ない」


 アベラさんが言う。


 「……あそこには、薬草はないの?」


 「あったとしても立入禁止区域だ」


 と、ラーグさん言った。

 そこに行けないと、全部アイテム揃えられない!


 「立入禁止区域っていっぱいあるの?」


 「危ない所は全部そうだ。行けるのは、モンスターハンターとトレジャーハンターだな。どうしても欲しい物は、どちらかに頼むもんだ。まあ大抵は、トレジャーハンターにだな。アイテムハンター兼トレジャーハンターをしているのもいる」


 「そうそう。アイテムトレジャーハンターって名乗ってるけどな」


 ラーグさんに続き、アベラさんが付け足した。


 「じゃ俺、そのアイテムトレジャーハンターって言うのになるよ!」


 「「はぁ?」」


 二人は、間抜けな声を出した。


 「ムリムリ。お前が逃げ出したモンスターなんて弱い方だぞ?」


 「無難にアイテムハンターにしておけ」


 くそう。それじゃ、森に行けないからダメなんだって! それに遺跡にもいかないといけない!


 「あらあら。むくれちゃってかわいい」


 お嬢にほっぺをつんとされた。やめてくれ……。


 「じゃこうしましょう。まずアイテムハンターに登録する。そして、これの魔月の花を採取してこれたらアイテムトレジャーハンターにしてあげるわ」


 古びた本を開きお嬢は指差した。

 俺は、頷く。今はそれしかないからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る