第116話 誤解!?(綾香6泊目)

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 俺は先輩の愛撫を終えて、ゆっくりとそのエロティックな湿り気を帯びた白い純白のパンツを脱がした。


 スラっとした白い肌をさらけ出した先輩の裸姿に目が釘づけになる。

 そんな俺を見計ってか、ニコっと笑みを浮かべて手を広げる先輩。


「大地……来て」

「先輩……」


 先輩は優しい瞳を向けながら、両手を広げて俺が来るのを今か今かと待ちわびていた。


 そんなエロい先輩の姿を見て、俺の理性は完全に崩壊した。

 俺はそのまま先輩を……


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「んんっ……」


 思考が現実に引き戻された。

 俺はまた何か夢を見ていたようだが、何を見ていたのか思いだすことは出来ない。

 そして、なにかとても気持ちいい触り心地の感覚が手の中に伝わってきて、ゆっくりと目を開けた。


 視界には、スヤスヤと寝息を立てて気持ちよさそう眠っている一人の女の子。

 そうだ、昨日綾香が家にやってきて、そのまますぐに眠っちまったんだ。

 昨日の記憶を、朝のぼんやりとした頭でなんとか思いだしていると、綾香が俺の腕の中でモソモソと動き出した。


「んん~!! ふはぁ~」


 目が覚めたようだが、すぐ俺の身体に再び腕を巻き付けて、眠る体制に入ってしまう。

 ふと掛け時刻を確認すると、朝の8時を回ったところ。今日の授業は午後からなので、まだ惰眠をするには十分な時間がある。

 正直、俺もまだ頭が重く、眠りから覚めることを身体が拒否していたので、綾香の温かくて柔らかい身体を再び抱きしめて、惰眠を謳歌した。



 ◇



 結局、お昼近くまで眠ってしまったが、綾香は昨日とは違って、いつもの穏やかさを取り戻していた。


「よく寝れた。ありがとね大地くん」

「いいって、俺もよく寝れたし」


 俺と綾香はお互いに布団の上に起き上がって、目を覚ましていた。


「やっぱり、大地くん抱き枕は他の抱き枕と違って私を快眠へと導く魔法の薬だよ」

「いやいや、薬って大げさな」


 そう否定はしてみたものの、俺も下着姿の綾香を抱きしめて眠っていると、とても心地よく睡眠が取れているのか、身体の調子からいい気がする。ホント、どっちが助けられてるんだが分からんなこりゃ。

 すると、綾香がクンクンと自分の匂いを嗅ぎだした。


「どうした?」

「へ!? いやっ、そのぉ……」


 綾香は顔を真っ赤にして、俯きながらもボゾボゾとした声で言葉を放つ。


「私、あっ、汗臭くないかなって……」

「あぁ……」


 俺は、綾香の体を全体的に舐めまわすように見つめる。

 今汗を掻いているようには見えないが、どうやら寝汗を掻いたので、匂いが気になっているようだ。


「ちょっと」

「何?」


 俺は綾香を手招きした。恐る恐る綾香が近づいてきたところで、俺は一気に腕を掴み、綾香をこちらに引き寄せる。


「キャッ!?」


 そのまま綾香を抱き寄せて、俺は綾香の匂いをクンクンと嗅いだ。


「ちょ……大地くん!?」


 綾香は顔を真っ赤に染めながら、恥ずかしそうに俺の元から逃げようと身をよじる。しかし、綾香が動くたびに、甘い香りと少し甘酸っぱい匂いが、俺の鼻を刺激してくる。


 俺はゆっくりと手の力を緩め、綾香を解放してあげた。

 そして、顎に手をやりながら口を開く。


「う~ん……ちょっと匂うかもしれないけど、俺は嫌いじゃないから別に気にしなくていいんじゃないかな?」


 そう俺が感想を述べると、顔を真っ赤にして綾香が自分の身体を手で隠す。


「もう……大地くん……もうちょっとデリカシーを持ってよ」


 綾香は鋭い視線で俺を睨みつけていたが、白の下着姿で、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに身体を手で覆い隠している姿では、ただのご褒美でしかなく、全く説得力がなかった。



 ◇



 結局綾香は、パパっと軽くシャワーを浴びてから、身支度を済ませて一緒に大学へと向かった。 



 しばらくプクっと頬を膨らませて、不機嫌そうにしていたが、俺が何度か謝ると、渋々許してくれた。

 綾香の機嫌も直り、いつものように大学の授業教室へと向かうと、珍しく一番最初に席を取っていたのは、詩織だった。


「よっ! 珍しいじゃん詩織が一番最初にいるなんて」

「私だって早く来るときぐらいあるっつーの! おはよう綾香っち」

「おはよう、詩織」


 お互いに挨拶を交わしてからいつもの席順通りに着席すると、詩織に腕を掴まれた。


「ちょいちょい」


 耳を貸せということらしい、俺は嫌々ながらも、詩織に顔を近づけた。


「ごめん、健太と気まずいから、私奥に座っていい?」

「あ~おけおけ」


 状況を理解した俺は、詩織と席を交代してあげる。


 結果、左から健太、俺、詩織、綾香の順番に座ることとなる。

 綾香は訝しむ様子もなく、隣になった詩織と話し始めた。

 それを見て、俺も再び席に座った。


 教室内は、大学生活に慣れてきたこともあってから、あちこちで騒がしい喧噪が聞こえてきている。


「ねぇ」


 すると、また詩織に小声で話しかけられた。


「何?」


 俺もつられるように小声で聞き返すと、今度は詩織の方から顔を耳元に近づけてきた。


「一昨日はありがとうね」


 詩織は少し顔を赤らめて、恥ずかしそうにしながらお礼を言ってきた。


「いいって別に、気にするな」


 俺が優しく微笑むと、詩織もほっと胸を撫で下ろした。

 それもつかの間、詩織はニヤニヤと悪そうな笑みを今度は浮かべると、再び口を開いた。


「今日は綾香と一緒に家からご登校ですか?」

「ちっ、ちげーよ……」

「えぇ? 本当に?」


 詩織は訝しんだ表情で睨みつけてくる。

 俺はなんとか誤魔化そうとするが、背中からボワッと汗が噴き出しているのが分かる。


「どうしたの二人とも?」


 すると、二人でヒソヒソ話ていたのが気になったのか、綾香が俺たちに話しかけてきた。


「えっ!? あっ、いやぁ……」


 どう誤魔化さそうか悩んでいると、ニタニタと笑っている詩織の姿が視界に映る。


「??」


 綾香が不思議そうに首を傾げてこちらを見つめてくる。助け舟を求めても助けてくれる人はこの場にはいない。


「そのぉ……」


 言い訳を言おうとした、その時だ。


「おっす~みんな、おはよう! ってあれ、どうした? 二人とも大地の方睨みつけて?」


 救世主がやってきてくれた。今だけは感謝するぜ健太。


「おはよう健太! 今日も暑いな~って話をしてたんだよ」

「え、そうなの?」


 健太は視線を綾香の方へと向ける。それと同時に、俺は綾香に目配せする。


「へっ!? う、うん!」


 綾香はちょっとぎこちないながらも、健太おどおどした様子で返事を返した。

 一方で、健太が来たことで、場が悪くなった詩織は、下を向いて俯いて黙ってしまう。


「??」


 無知な健太のおかげで、なんとか危機を乗り越えることに成功したのはいいけど、詩織のことは気づいてやれよと思う今日この頃でした。


 その後も、詩織は健太のことを徹底的に避け、俺の横にピッタリとくっついて行動した。それを見た綾香が、怪しい目線をじぃっと向けてきて、なんだかギスギスした雰囲気が漂っていた気がするが、能天気な健太がいてくれたおかげで、なんとか耐えた凌いで授業を乗り切った。


 一先ず、健太を先に帰らせてから、詩織の状況を綾香に説明する。


「なんだぁ~そういうことだったのかぁ!」


 綾香はホッと胸を撫で下ろして、安堵の表情を浮かべる。


「いやぁ、ホントにごめんね、迷惑かけちゃって」

「いやいや、仕方ないよ! 私も頑張って協力するね!」


 握りこぶしを二つ作って、よしっ!っと言ったように綾香が気合いを入れた。


「それで? まだ、私のさっきの話の答えをまだ聞いていなけど?」


 詩織がにやりとした視線で見つけてきた。

 くそっ、もう忘れてくれよ。


「えっ? まだ何かあるの??」

「えっとぉ……」


 綾香に尋ねられても、俺はあははと苦笑の笑みで誤魔化すことしか出来ない。だが、詩織がここぞとばかりにおふざけ半分で口を開いてしまう。


「えっとね! ぶっちゃけ、昨日の夜、綾香と一緒にお楽しみだったんじゃないの?って話」

「へぇっ!?」


 すると、綾香はビックリしたように目を見開いたかと思うと、見る見るうちに顔が赤くなっていった。


「……えっ…マジなの!?!?」


 本当に冗談半分だったのだろう、詩織は綾香の反応を見て、驚いている。


「い……いやいやいや……ないないない!!!」


 手を横に振って綾香は必死に否定していたが、詩織はニタァっと笑顔を作って俺たち二人を交互に見つめていた。


「へぇ~なるほどねぇ~」


 詩織はニヤついた笑みを浮かべたまま、手を振りかざして、ドンっと背中を叩いた。


「大地、アンタも隅におけない奴!」

「いってぇ……」


 俺が叩かれてしまった。


「色々と納得がいったわ、あースッキリした」


 詩織は俺と綾香の関係を察したのだろう。まあ、多分間違ってるんだけど。


「えっ、納得って何が!?」


 綾香はまだ状況が頭の中で理解できていないようで、何がなんだが分からないといったような感じ。


「まあ、とにかく、二人ともお幸せに~」


 詩織はそう言い残して、リュックを背負い、手をヒラヒラと振りながら、その場から去っていった。邪魔者は消えますよ~的な感じなのだろう。


「え? ちょっと詩織ちゃん!? えっ? ねぇ、大地くんどういうこと?」

「あははは……」


 綾香に肩を掴まれ、ぶんぶんと身体を揺すられる。俺は苦く諦めた表情で、綾香のへ事の次第を告げる。


「俺と綾香が付き合ってるって勘違いしたみたいだぞ、アイツ」

「えっ……」


 綾香は一瞬ポカンとしていたが、一気に顔を真っ赤に染めて、頬に手を当てた。

 そして、俺の方をチラっとみて、様子を伺ってくる。


 俺は手を両手に広げ、『さぁ?』といったようにして見せた。

 綾香は憤慨したように顔を真っ赤にして言った。


「もう! どうして否定してくれなかったの!!?」

「いやっ、もうなんか面倒くさくなっちゃって」


 俺がそう言うと、綾香は俯いてしまう。


「まぁ……大地くんがそれでいいって言うなら、それでもいいんだけど……」

「え、何か言った?」

「ううん。なんでもない!! それじゃあ大地君! またね」


 そう言って、綾香は手をブンブンと振って、手元にあったバックを手に取り、そのまま踵を返して、詩織が去っていった方へと走っていく。


「待って! 詩織~違うんだってば~!!」


 教室の外から綾香のそんな焦り声が聞こえてくる。

 色々問題は起きたが、誤解は綾香が解いてくれるだろうし、何より綾香の反応が可愛かったので、まあ良しとしよう。

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