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「九人もの女子の魂を絵画に封じ込めた霊だよ。そんな話、信用出来ないよ」


「でも本当なんだ。絵画の美少女は誰1人唐沢先輩に恨みごとを言っていない。きっとあたしにはわかんない何かがあるんだよ」


「そうだとしても、流音に何が出来るんだよ」


「そんなことわかんないよ。でも学園に太陽の光を恐れない新種のヴァンパイアが潜んでいることは確かなの……」


「新種のヴァンパイア……か」


「澄斗、あたしに協力して。もう誰も信用出来ない。本橋さんの正体を暴きたいの」


「本橋さん? 彼女は幽霊とは無関係だよ」


「無関係なんかじゃない。ハカセを殺した。ハカセが化学室のヴァンパイアだと知った上で殺したんだ」


「ハカセって……?」


「本橋さんが殺したネズミだよ」


「ネズミが化学室のヴァンパイアだっていうのか?」


「うん。ハカセは唐沢先輩の友達なんだ。本橋さんはハカセがネズミに変身することを知った上で、わざと鼠捕りで捕まえて殺したんだよ」


「まさか……」


「本橋さんはきっとヴァンパイアに吸血され、自身もヴァンパイアになったに違いない。次の獲物はあたしか澄斗……」


「流音、そんなこと本気で言ってんのか?」


「信じないなら、それでも構わない。でも十分用心して欲しいの」


 澄斗はあたしをマジマジと見つめた。


 きっとまた否定するに決まってる。こんな非現実的な話……。


「俺は幽霊の存在も、ヴァンパイアの存在も信じない。だけど、学園で不吉な前兆があることは確かだ。それが本橋さんのせいなのか、今も存在している美術室の幽霊のせいなのかわかんねぇけどな」


 澄斗はあたしに視線を向けた。


「けど、お前のいうことを信じるよ。幼なじみだから。流音は嘘はつかない」


「本当? あたしの部屋に絵画があることは誰にも言わないで。本橋さんや伊住君や黒谷君にも言わないで欲しいの」


「わかった。だけどひとつだけ条件がある」


「条件?」


「その美術室の幽霊に逢わせろ」


 逢わせろって……!?


 まじで?


 怪奇現象、肝試し、心霊写真に、怖い話。この世で一番幽霊が嫌いで、怖がりで超ヘタレな澄斗が、幽霊に逢わせろ!?

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