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「唐沢先輩、悪霊に呪われてるの? あたしに説明して」
『君に説明することはない。ただ自由に動くことが出来れば、学園の異常を察知出来ると思っただけだ』
「唐沢先輩、あたしの話を信じてくれる人が現れたの」
『君の話?』
「あたしが襲われた話だよ。一緒にヴァンパイアを捜してくれるって」
『ヴァンパイアか……。ハカセ以外に太陽をも恐れぬ新種のヴァンパイアを、一体どうやって捜す気だ?』
「……それは。ただ……困ったことになりそうなの」
『困ったこと? 何をした?』
唐沢先輩は立ち上がり、ドンッと壁に手をつく。……が、その手は壁の中にどんどん吸い込まれる。
美術室のドアはすり抜けることが出来ないのに、壁は吸い込まれちゃうんだから。
――待って……。
壁に吸い込まれる!?
「唐沢先輩……。美術室のドアから廊下には出れないんだよね?」
『そうだ。それがどうした? それより君の話を続けろ』
「壁ドン、出来ないんだよね?」
『……っ、壁ドンくらい俺にも出来る』
唐沢先輩はもう一度チャレンジするが、壁に手をついた途端、その手は壁の中に吸い込まれた。
今まで、どうして気がつかなかったんだろう。
「唐沢先輩、もっと壁に手を入れてみて」
『はっ? 俺をばかにしているのか? 壁ドンだか床ドンだか知らないが、そんなものが出来なくても男の価値は下がらない』
「屁理屈はいいから、早く壁に手を入れて!」
唐沢先輩の体をドンッと押すと、その体は壁の中に吸い込まれた。
お尻と足だけが壁から突き出している。その滑稽な姿に思わず吹き出した。
スクッと壁から抜け出し、元に戻った唐沢先輩はすでに怒っている。
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