プロローグ 星の聖騎士『2』
高校二年の二学期。中間考査の日程がすべて終わり、
「小夜香、今日どっか寄って――」
「ごめんなさい。今日は、ダメなの」
胸の前で手を組み、小夜香はほうっと息をつくと、遠くを見つめて
「運命の人に、会いに行くから……!」
「あ、はい。ゲームね。もう買ってあるんだっけ? 『星の
「お手製の
「祭壇に。……発売日、テスト前だったんでしょ? よく
「超~ぉ、やりたかったけど、成績落ちたら親にゲーム禁止令出されるし、何より……」
胸の前で組んでいた手を
「成績が落ちるのを聖騎士達のせいにするなんて、私自身が許せない!」
「このオタク意識
成績を落とすわけにはいかないため、テスト期間中はほとんど寝ずに勉強していた。
「おかげで
「あんた、あのゲームのためならすさまじい力を
「ってことで、私は帰るね! テストお疲れー!」
気の抜けた空気の
「本当に、聖騎士のためなら軽く世界でも救いそうだなあいつ……」
忍者のように人を
「ふふふ……待ってたぜ、この日を……!」
祭壇の上に飾ったゲームソフトを、小夜香はそっと手に取り、頭上に
「『星の聖騎士2』! はっじめっるよー! フゥー!」
両親は仕事で夜遅くまで帰って来ない。もはや誰も小夜香の
もう何度プレイしたかわからない恋愛シミュレーションゲーム『星の聖騎士』――主人公は姫であり、『星の力』という特別な能力を騎士達に与える『聖女』でもある。十二の星座を
その続編がつい先日発売された。小夜香はテスト期間中だったため、ソフトを手製の祭壇に飾り、パッケージを毎日
制服を着替えもせずにソフトをポータブルゲーム機に入れ、電源を押す。
画面に映ったのはタイトル画面。タイトル下の『スタートボタンを押してください』という言葉に
「え、何、
画面には、真っ黒な背景に白い文字が浮かび上がっていた。
『あなたは、聖騎士を知っていますか?』
「知ってますともー!」
『はい』か『いいえ』の
『あなたは、聖騎士達を愛していますか?』
「イエスイエス! 超イエス! 愛してるー!」
彼らはそれぞれ怪物を倒し、人々を守るという使命を持っている。しかしその信念は一人ひとり違っていた。彼らの信念に小夜香は心を動かされ、
『あなたは、聖騎士達がどんなに変わっても、愛せますか?』
その質問に、小夜香は少し考えてしまった。というのも、続編は楽しみだったが、前情報はほとんど見ていない。プレイした時に驚きがほしかったからだ。ただ、シナリオライターが変わり、聖騎士達の性格もかなり変わっているとの
「ま、まあ、私は聖騎士達の信念さえ変わらなければ、全然構わないし! うん、大丈夫!」
ちょっと不安になってしまったが、小夜香は『はい』を選ぶ。
『あなたは聖騎士達を――どんなことをしても、手に入れたいですか?』
「何かいきなり
また不安が
「手に入れますとも! 今回も全員私のものよ! やっぱり最初は
ハイテンションのせいで言い回しが悪役みたいになってしまったが、実際そのつもりだ。前作ではハーレムエンドが隠しルートとしてあったが、小夜香は攻略を見ない主義だ。そのうえ難易度が高く、運要素まで必要になるため、まだハーレムエンドは見たことがない。また
「――あなたの名前を教えてください」
その言葉は文字ではなく、若い男性の声で小夜香の耳に届いた。
名前を入力しようとするが、いくら待っても入力画面が出てこない。音声認識機能が初期設定なのかもしれないと思い、小夜香は自分の名前を声に出す。
「さ、小夜香……。黒崎、小夜香」
男性の声が、一瞬笑った気がした。
「では、サヤカさま。あなたは聖騎士達の星の力を奪う者――聖騎士達の敵です。星の力を奪い、彼ら全員を倒しましょう」
敵――そのたった一つの単語が、小夜香の胸にぐさりと突き
「っていうか、倒すって……何? 力を奪う? はあ!? 何で憧れの聖騎士達を倒さなきゃいけないのよ、ふざけんなー!」
怒りのままに
(あ、やばい)
そう思った時にはもう遅い。ゴッ、と後頭部に
※次回:2019年2月13日(水)・17時更新予定
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