経河咲江、前世からの運命と向き合います。

神谷きゆき

序章


漆黒の闇の中


満月だけが浮かんでいる


音も色もない世界




––––––月明かりの下、何かが動いた。


ゆっくりと–––––––––––––



舞い踊るかのように動くそれは、


シルクハットと長いマントを身につけて


三日月のように、綺麗に輝く大きな鎌を軽々と操っている。


月明かりのシルエットで顔はわからないが


片眼鏡をかけているように見える。



と、揺れるマントの横で倒れ込む もうひとつの人影。


紅い水飛沫が鮮やかに散らばる。



全てがスローモーションのようだ。



マントの人物は、


倒れこんだ人を


まるで人形を拾い上げるように服を掴み


振り返ることなく


闇の中へと徐々に消えてゆく。



私は手を伸ばして駆け寄ろうとするが、足が動かない。

声も出ない。

目頭に熱いものがこみ上げてくる。

悲しみや懐かしさが織り交ざったような、湧き上がってくるこの感情は、倒れ込んだ人ではなく、、、


何故だか、その大鎌を持った人物に向けられている––––––––––





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