第9話


 ――ひやり。




 額の冷たい感触に、目が覚める。


 開いた視界の中へ、ひょっこりと義兄の顔が入ってきた。


「あ、起きた?」


「おはよう……ございます」


 状況を把握するのに、数分かかった。


「すみません、僕、寝込んでしまってたみたいで……」


 明るくなっている窓の外に目を向けて、「昨日は晩御飯食べれましたか?」と義兄に訊く。


「うん。大丈夫大丈夫」


 にっこり笑う裕文さんが、とっても怪しい。


 枕元に置いたスマホで、時間を確認した。




 ――まだ、5時半。




 今から用意したら、裕文さんに普段よりは栄養のある朝食が作れるだろう。


「ダメダメ。今日はゆっくり寝とかないと。俺だってお粥くらいなら作れるんだから」


 起き上がろうとした僕の両肩を掴んで、裕文さんがベッドに寝かしつけてくる。




 まるで子供みたいだ、と思った。


 そうして、裕文さんの手の感触に、眉を寄せる。




「どうしたの?」




 訊いてきた裕文さんの顔が、まともに見れない。


「いえ。あの……変な夢、見たみたいで……」


「……へぇ。どんな夢?」




 ――……言える訳がない。




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