第6話

「じゃあ、行ってらっしゃい」


 なんで僕の方が早く出ることになってるんだ……。


 そう思ったけれど、満面の笑みで見送られると、何も言えなくなる。


 僕の方が後から出るとなっていたら、そのまま家で過ごすことも出来たのに、と今更そんなことを思う。


 ま、いっか……と、義兄に手を振って家を出た。


「行ってきます」


 本当に友達を誘って遊びに出掛ける、という事も出来たけれど。


 裕文さんがお見合いだと思うとそんな気分にもならなかったのだから、仕方がない。


 とりあえずテキトーにどこかブラブラして、早めにコンビニ弁当でも買って帰ろう……と思う。


 それかどこかファーストフード店でも寄ってから帰ろうか。


 コンビニ弁当の空箱が見つかったらマズいしな、と悪い事に慣れていない子供のように、どうでも良い事で悩んでしまった。





 結局街を少しブラついて、行きたい所も見たい所もない事に気づく。


 まいったな、と少し考えて。


「そうだ……!」


 良い事を思いついたと、花屋に入った。


「予算2,000円なんですけど。女の子が喜びそうな花束を作って下さい」


 元気よく言った僕に、花屋のお姉さんはにっこりと笑う。


「あら。デートですか?」


 そう訊かれて、「違いますけどそんな処です」と答えた。


 ふふっと笑ったお姉さんは、ピンク色の可愛いガーベラに、オレンジ色のバラを少し、そしてカスミソウを加えてくれる。


 とても可愛く包んでくれて、「少しオマケしておきます」と言ってくれた。


「どうもありがとうございます!」


「はい。行ってらっしゃい」


 今日2回目の行ってらっしゃいに見送られ、僕は「行ってきます」と花屋を後にした。

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