5月10日(月) 広島市中区本川町にある立ち呑み焼き鳥店「西乃屋」で飲んで食べる。

広島市中区本川町にある立ち呑み焼き鳥店「西乃屋」で飲んで食べる。


結婚して性を変えた時と同じくらい、クレジットカードの有効期限が変わるのは手間がかかる。ネット上ですぐに変更できればいいが、光熱費はわざわざ新しい用紙に記入して届けたり、インターネット回線となると契約する会社と支払い先が異なり、お客様番号が見あたらなかったりする。こういった書類関係の作業は嫌いではないが苦手で、リストアップして毎日一つずつ変更していき、今日はガス会社に届ける為に郵便を投函することにした。


予定のない今日は最近の状況がそうさせるようにベンチに座ろうと思ったが、夕食をとってから外に出て、ポストに投げたついでに「西乃屋」さんに寄った。


お客さんはちらほらで、立ちスペースの両サイドは透明なシートに遮られて個人的な空間になっている。前回の経験を踏まえ、里の曙をストレートで注文する。今の時期の常温となると温く、ややしまりのない焼酎の味がやけに懐かしく感じる。それは学生の時の焼鳥屋のアルバイトの後に、職場の先輩が必ず店で一杯おごってくれて、そのまま次の日は学校へ行かずに寝坊する流れの味だからだ。


しかしその店にかしわはなかった。のど軟骨は脂分を持つも豚らしくさっぱり白い味となっており、コリコリする堅くない食感は気持ちよかったが、かしわは頑固なまでに堅い。ほんとかたい。噛んでも噛んでもほぐれず、すぐに顎が疲れるほどだ。しかしぎゅっとしまった身には脂のほどよい濃密な肉がつまっている。


目はカウンター越しの焼酎の瓶に当てて、とにかく噛んだ。会話は顎と筋肉をすり減らすかしわがするのみで、立ち、とにかく顎が話をした。


こんな店が近所にあるから嬉しい。肉体仕事の平日は補充の肉が必要になるので、ちょっと足りない時は「西乃屋」さんで補える。


焼酎と串で一人黙然といつまでも噛み続ける。そんな投函ついでの飲み食いで、顎の筋肉痛を空鞘公園のベンチでかみしめる。

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