広島市中区八丁堀にある立ち呑み店「そらや」で飲んで食べる。

休日の予定を終えて、家路にのぼる前に「そらや」さんに寄る。刺身と一杯が休みの終わりにピリオドを打つのだ。

土日とも午前は家で腰を着け、落語と音楽を耳にしながらパソコンの前にいた。窓から太陽が射す心地良さは今が旬だろう。

二日続けて室内楽に浸ったせいか、音楽について考えてしまう。東京にいた頃なら、商業的な面があったとしても「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」があった。プログラムに授業を組み立てるようにコマ割りしていたのはもう十年前になるのか、広島の室内楽の二日間はその気分を蘇らせるものがあった。

回春を飲み、扶桑鶴を飲む。ポテサラを食べ、よこわのたたきを食べる。あっさりしているが爽やかな赤身の風味はねっとりしていて、身はもっちりしている。脂部分はまだまだ成長する細胞の萌芽が残るようで、中年の自分にはやたら重く響く。

別になんてことはない飲み食いでも、立ち呑みなら背筋を伸ばし、決して丸くなることなく厳しいほど緊張を保った姿でカウンターを前にして、酒と魚を食べたい。そういう気分の今日だ。

憂鬱でもなく、浮かれた気分でもない。なんとなく感謝したくなる夕方で、明日からの仕事も別に嫌がることもせず、好みもせず、落ち着きの一杯の中で、音楽の存在を大きく感じるだけの「そらや」さんだ。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい