4月11日(日) 広島市中区三川町にあるギャラリーたむらで「谷本 景 作陶展」を観た。

広島市中区三川町にあるギャラリーたむらで「谷本 景 作陶展」を観た。


ギャラリーたむらさんでの「谷本 景 作陶展」が今日までなので、足を向けた。


毎度来ると作品の高い質とギャラリーに共通する要素を観るようで、今回も陶芸展でありながら現代アートのような形象を皮膚で感じることになった。


まず、作品を触らせてもらえるのが嬉しい。彫刻ならあきらめもつくが、焼き物となると手による触感が大きな意味を持つ。見た目は決して整った作品ではないが、歪で分厚い器を持つと、目で受け取る量感よりも重たさはなかった。しかし軽いのではなく、バランスのよい重量感とでも言うのだろうか、オーナーさんの説明によると穴窯を使っての焼成らしく、たっぷりガラスがへばりついているにも関わらず、なんと焼き締めらしい。それは伊賀の薪はガラス質を多く含んでいるらしく、焼成の間にその成分が溶けだし、見込みにたまって綺麗なエメラルド色を残しているそうだ。自分は訪れたことのない土地の焼き物を写真で見て知った気になり、経験のない軽口で的はずれな感想をつい口にしてしまったが、そのガラス質は胴にも分厚く浮き出していて、まるで器の肌が内から空気を吹いて膨らませたような呼吸が残っている。


一つの器の一要素だけでも見所はあり、説明で聞いた赤松の自然灰による焼き上がりは、毎日触って眺めれば必ず発見があることだろう。轆轤では決してないゆがんだ形態は鉱石をそのまま掘り出したようで、薪と火によって生み出された石のエネルギーと魁偉な元素的な肌合いは、人為的な自然作用の結合と結晶のようだ。


銅鐸のような作品や、干上がった沼地や蟹の甲羅のような作品もあり、貫入と呼ぶにはあまりにも大小にひび割れた地肌は、観る者を圧倒する火の力が残されている。土と火、その化学反応による偶発的な作為は、一見の自分にはほとんどわかっていないのだろう。


広島のギャラリーのあり方と、ただ観に来るだけでなく、購入するという一歩進んだ美術鑑賞の話も聴けて、今回もギャラリーたむらさんから教えてもらうことがあった。ついつい金銭を言い訳にしてしまうが、いつか大枚を払ってでも欲しくなる作品に出会えるだろうか。背伸びはしないが、自分が正直でいられる関係性を確認したくなる「谷本 景 作陶展」だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る