1月20日(水) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで岡本喜八監督の「暗黒街の顔役」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで岡本喜八監督の「暗黒街の顔役」を観る。
1959年(昭和34年) 東宝 101分 カラー 35mm
監督:岡本喜八
脚本:西亀元貞、関沢新一
撮影:中井朝一
美術:阿久根巖
音楽:伊福部昭
録音:刀根紀雄
照明:森弘充
出演:鶴田浩二、宝田明、三船敏郎、白川由美、草笛光子、柳川慶子、笹るみ子、河津清三郎、平田昭彦、田中春男、佐藤允、中山豊、桐野洋雄、山本廉
先月からの三船敏郎さん特集を観続けていると、今日の作品のような映画の存在を忘れていたと気付かされる。日活かと思えば東宝で、自分の好みで言えば肌に合わない。やたら動くカメラワークに粋よりも無粋なカットの繋ぎがあり、人物造形も派手だからこそ単調なところがあり、登場人物の役割もいくぶん放ったらかしだ。
本音を言えば鶴田浩二さんが演じる主人公そのものに同調できず、その弟を演じる宝田明さんも受けつけるとは言いきれいない。脚本や演出も正直言って臭く、外国映画を基準とするギャングやハードボイルドの印象からすると安っぽさが勝っており、オペラ作品のように筋よりも音楽で魅せるように、惹きつけるアクションで他を容赦できればいいのだが、まがい物ではなかなかそうもいかない。
続いている特集でなぜこの作品が選ばれているのかと疑問に思うほど、三船敏郎さんの役はしようがない。意味ありげな布石はあるが特に展開されることもなく、ドリルを持って叫ぶというなんともおかしな姿を観ることができた。おそらくというか間違いなく、こういう一面もあるのだという提示があるからこそのチョイスではあるが、端正な顔立ちが画面を埋めるなかで、唐変木なある種の鈍くささで目立っていた。
賭博場で闘ったり事務所で殴り合ったりアクションの勢いはあるが、どうも素直に熱くなれなかった。ただ、田中春男さんと河津清三郎さん、そして佐藤充さんなどの悪役がやけに精彩を放っていて、悪い者ほど格好良く見えるという一面でうなずけた。
映画や食物にアルファベットでランク付けすることはあるが、この作品は先月と今月観た中で一等下がると言えば失礼になるだろうか。ただ、素直な感動だけでなく、世界でも著名な俳優を修理工場の半端な役回りで使う面白さがあり、前総理にときどき見えてしまう鶴田浩二さんの覇気がやや足りない人物もまたおかしいものがあるから、映画はよいものだ。
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