10月24日(土) 広島市中区十日市町にある酒店「K-wine」で試飲する。

広島市中区十日市町にある酒店「K-wine」で試飲する。


寺田本家の香取を飲んだのは「醸 はせべ」さんでの色々学べる地ぐ酒ぐの振る舞い酒だ。「じ味 一歩」さんで五人娘を飲んだこともあとあと思い出されたが、どちらも巷で飲んだことのない珍しい味に興味は俄然湧いた。


「醸 はせべ」さんの大将が教えてくれたのが「K-wine」さんで、ここに寺田本家の酒があるらしく、もらったショップカードを眺めていると、職場からとても近いことがわかった。


それから不思議な繋がりが発生するのは、シナプスが神経を張り広げるようで「K-wineさん、そうか、ここはベックさんで昼の弁当を買って家に帰る時に通り過ぎる自然派ワインの店だ、そうか、気になっていたあの店か」なんて思っていると「もしかして、職場に商品を時々買いに来るK-wineさんは、このK-wineさんで、あの店がそうなのか」と急に合点がいき、数日前に仕事場に来ていたところで寺田本家の酒を尋ね、すべてが一致した。


そんなわけで店に足を運び、寺田本家の酒と自然派ワインを試飲させてもらう。日本酒もワインもまだまだ自分は序の口だが、「ナチュールワイン&パブ アンダー」さんで直感した自然派ワインの世界がここから大きく開けていくような味わいがあり、赤と白のワインは寺田本家同様に、今まで持っていた自分の概念の枠外にある味で、相当に強烈だった。香りからして強く異なり、屈強ながら様々な柔らかい要素を含んだ鮮烈で明確な味わいは、一口目で驚き、二口目でさらに驚き、三口目でより驚くという凄まじい舌の覚醒が段階に発生して、古典と呼ばれる小説を初めて手にして、これほど面白い世界が広がっているのかと目が大きく開けるような感動を引き起こした。


それは「醸 はせべ」さんのテイクアウト弁当でだし巻き卵を食べた時に近い印象で、あの時は味そのものがぼんやりしてとらえきれなかったが、今回は強く豊富にありすぎるからこそより奥があることを知れる味だった。


時間差のある縁で「K-wine」さんに辿り着いたが、それはようやく自分の舌と酒の経験がそれらを求めるに値したことに他ならないのだろう。食の世界はあまりに広く、奥深く、なにより金がかかってしまう分野だが、身の丈をすこし越える程度にこの不思議な酒の位置に踏み込んでいこう。


「K-wine」さんの話では、ぶどうそのものに付いている自然酵母で作られるワインは全体の1パーセント程度らしく、どこも自然環境と経済の需要の厳しさに綱渡りしているような状態だそうだ。99パーセントの需要ではなく、1パーセントの嗜好には特別で本物の味わいがあるだろう。そういえばクセともいうべき味のある人物はそうそう多くなく、これらの酒にまつわる広島の食の人たちも、どちらかと言うと、などの形容を必要とせず、断然寺田本家の酒のようにいい味がある。


ならば自分も1パーセントの味になろうなどと、変に勢い込んでしまえる新たな酒の出会いだった。

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