10月9日(金) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでキム・ヨンファ監督の「神と共に 第一章:罪と罰」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでキム・ヨンファ監督の「神と共に 第一章:罪と罰」を観る。


2018年 韓国 140分 カラー Blu-ray 日本語字幕


監督・脚本:キム・ヨンファ

出演:ハ・ジョンウ、チャ・テヒョン、チュ・ジフン、キム・ヒャンギ、イ・ジョンジェ、D.O、キム・ドンウク


良い意味で何でもありの作品だった。死後に7つの裁きを受けて生前の罪を面と向って問うことを描いているのだが、「三国無双」、「ドラゴンボール」、「ベルセルク」、などの要素が混ざり合い、瞬間移動すれば、大剣で切りつけ、両刀でなぎ倒し、冥界と下界を自由に行き来してしまう。


CGのオンパレードにロケ地の質を考えることはなく、「マッドマックス」のボルテージとスピード感は質の高いコンピューター技術に支えられ、いわば夢のカメラアングルとしてトンボの飛行速度と柔軟さに展開をとらえていく。


大人になってしまった今ではこれらの演出に目をぽかんとさせるのだが、小さい頃なら瞬時に剣を手に発生させて、火を投げたり、迫り来る相手に格好良くさばいたりする姿に憧れただろう。仮に自分が女性だったら、痩躯長身の男性俳優のスタイリッシュな姿に色気を感じたり、渋い顔つきの知性に惚れ込んだりするのだろう。


自由な発想と制限のない想像力で冥界を派手に造形してはいるものの、主題はオムニを中心にした二人の息子の関係で、長兄は罪のない人生を送ってきたように見えながら、その背景には大きな悔恨としての染みがあり、だからこそ償うように自身の生を家族に捧げてきたという悔い改めの清い生き方のようでも、嘘も方便に多用していて、結局向き合うことを恐れて逃げていたことを自覚していた。


およそ罪のない人間はおらず、それを達成できるのは稀な聖人だろう。キリスト教でも仏教でも登場する人物には過去に悪人だった者もいる。過ちをいつまでも断罪する風潮を昨今見たり聞いたりするが、肝心なのはそこから如何に変わっていくかであり、トルストイの「復活」やドストエフスキーの「罪と罰」にあるように、新生してこそ立派になる人間もいるのだ。


自分の罪を省みずに他人を悪し様に言うよりも、わずかでも自身を反省して、いったいどんな罪を犯しているか考えずにはいられない作品だった。仮に罪を犯しているなら、それが自分ではなく、他人の為にせざろうえないなら、多少の許しもあるだろうと、その容赦も忘れてはいけないと進むことを止めない世界は教えていた。

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