6月11日(木) 広島市西区横川町にある海鮮料理店「sealas MARKET(シーラスマーケット)」で釜揚げしらす海鮮丼を食べる。
広島市西区横川町にある海鮮料理店「sealas MARKET(シーラスマーケット)」で釜揚げしらす海鮮丼を食べる。
判断を間違える時というのは、たいてい疲れが溜まっているか空腹の場合で、両方が合わさると正解を選ぶのはどれほど難しいことかと思うほど、普段は気にもならない現象の負の部分ばかりとらえて苛立ってしまう。
落語を聴いているあいだもつい夕食を考えてしまうほどの腹の空き具合で、どんっと穴が開いて次々と力を奪っているようだった。何か力のつくものを食べようと横川付近を歩くと、ふと、最近しらす漁の解禁をネットでもラジオでも知ったので、ついつい丼が美味しそうな「sealas MARKET(シーラスマーケット)」に入ってしまった。アルファベットの綴りにすこし加えて、シーラカンス、などと思いながら奥に進むと、しまったことに居酒屋というか飲み屋らしい店内で、入るところを間違えたと気づいた時には、引き返す気にもならなかった。
ラストオーダーは21時30分といわれ、まだ1時間はある。身を店内に引き入れたしらす丼を探すも、新聞らしい媒体のメニュー表にはのっていない。一品物が多く、炭水化物を欲する今の体に合わない。こんな時は気も弱っていて、自分がみすぼらしく思えてしまい、注文もなかなか定まらない。それでもしらす丼はないかと尋ねると、ランチメニュー表を持ってきて、味噌汁はつかないが用意できるということなので、しらすだけでなく、ほかの魚介類も合わせた海鮮丼を頼むことにした。
ただ、なかなか丼はやってこない。それもそのはず、キッチンは1人しかおらず、それでいて声がやまずにとびかう10人を越す若い女性の団体客の他に4組はいるのだから、とても手がまわらない。これに気づくのも遅く、入店直後に判断できそうなものを、ぼんやりしていたので途中で帰ることもできずにいた。米を欲しがる腹に酒を入れたくなかったが、礼儀として小さなプレミアムモルツを頼むものの、一口飲んで泡は消えていくばかりだ。
ようやく運ばれてくると、思ったよりも見た目がよくて困ってしまった。米よりも魚が多いほどで、まずは粒を探してほじくり回す始末だった。
ウニ、イクラ、サーモンなどは北海の幸らしいが、広島でもウニが採れると知って驚いてすぐ、小さい時に伊豆の海へ遊びに行った時に、波に運ばれたウニが岩場にちょこんといて、その中身を食べたことを思い出し、どこにでもいるのだと短絡的な結論をつける。てっきり生シラスかと思っていたら釜揚げで、湘南の海もシラスが有名だと昔を追懐する。
味はどれもおいしい。一品一品味わう余裕などなく、醤油をかけて一緒くたに口に入れてしまった。おまたせしました、そんな気持ちが伝わってくるマスク越しの目はキッチンとホールからあり、後味は決して悪いものではなかった。
帰ろうとすると霧雨が降り出していて、ここでも、違った選択をしていたら濡れずに歩けたのにと、長靴に履き替える。それでも、街灯のまわりを斜めに降る無数の雨粒はオレンジに光って綺麗で、広い本川は眠ったように静かだったから、こういう情景を味わえるのならば、夜の短い時間を気にしてせかせかすることなく、良い判断に違いなかったと思えるものだ。
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