1月31日(金) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでエリック・ロメール監督の「木と市長と文化会館」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでエリック・ロメール監督の「木と市長と文化会館」を観る。


1992年 111分 カラー 35mm 日本語字幕


監督・脚本:エリック・ロメール

音楽:セバスティアン・エルム

撮影:ディアーヌ・バラティエ

出演:パスカル・グレゴリー、アリエル・ドンバール、ファブリス・ルキーニ、クレマンティーヌ・アムルー、フランソワ・マリー・バニエ、ジャン・パルヴュレスコ、フランソワーズ・エチュガレー


恋愛以外の内容では初めて観るエリック・ロメール監督の作品は、ドキュメンタリーらしい手法を使って真正面に社会問題を取り扱いながら、ユーモアでもって解決を結んでいた。論議のショットがあまりに多く、字幕を追うことに集中されてしまい、役者の動きはあまり注目できずにいた。それに加えて台詞の内容が各イデオロギーの違いに加えて、農家の減少や衰退などの地方の村が直面する問題なども絡めながら環境についても話されていて、興味深くはあるも、感覚的な言葉の捉え方よりも、むしろ基礎知識の積み重ねによる論理的な応用問題を解くような頭の働きが求められ、面白いのだが間延びして、つい眠くなる場面もあった。


淡い画面のシーンもあり、それほど古い作品ではないが空気感はぼやけたのどかさがあり、登場する人物も素人と思える陽に焼けた人や、はにかみながらも機知のある冗談を言ったりと、インタビューのシークエンスなどは本当のドキュメンタリーらしく問題提起がなされている。


ぶつかり合う親の娘同士の結びつきに、子供と大人の問答などの映画作品らしい良き展開とカメラワークもあり、映る丘と村の景色も美しく、真面目な問題だからこそはぐらかすではないが、ちょっと変化をつけて親しみを持たせて問いかける作品としての訴えも感じられた。ただ、底にはあるのは、大切なものをあたりまえの視点で見直すという、失われていく世界への真率な投げかけと愁いだった。


正直、自分は政治や社会問題にほとんど興味と関心はないが、自分の住んでいる場所をどのように変えていくか、というよりもどのように設計していくか、それが政治家の根本だと教わった、というよりも改めて気づかされる映画だった。自分を例にするなら、もっと良い芸術作品を味わいたい、だからどうするか、そんな個人の生活の要望は多様にあり、それぞれの思惑ではないが、地域が求めるものが極めて複雑に絡まるなかをどのように汲んで社会に反映するか、その手腕こそ政治家の力量になるだろう。


現実は決して甘くないが、理想を追求する無謀ともいえる芸術的な活動家の生涯を思い出し、少しだけ政治家という職業が面白いと思える映画だった。

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