第3話 説明と移動

 五十嵐京也は目を覚ました後、見た覚えのないところの探検を始めた。まずは部屋から。部屋はとてもシンプルで、無駄なものが置いていなかった。クローゼットの中身は無い。机の引き出しを確認しても何もない。部屋の探検が終わり、次に廊下に出てみる。

 すると、ちょうどタイミングよく隣の部屋から女性が出てきた。蓬静という同じ高校の後輩らしい。最初はお互い警戒したが、挨拶をして、エントランスへと向かった。

 エントランスには既に数人いて、それぞれが考え込んでいるような表情をしていた。蓬静も知り合いを見つけたのか、一人の女性の方へと駆け寄っていく。京也が一人になり手持ち無沙汰になっているところに一樹が来た。


「――とまぁこんな感じだ」

 京也と一樹はエントランスの一角にある柱に寄りかかり話している。

「にしてもここはどこなんだろうな、一樹何か知ってるか?」

 腕を組んで自身の経緯を話している京也に対し、一樹はポケットに手を突っ込み空を仰いでいた。それに気づいた京也は一樹の肘を小突く。

「え? あぁごめん考え事してた。何の話だっけ」

「俺がここで目覚めてからの行動の話。最近多いよな考え事」

「悪かったって」

 一樹が平謝りしていると、二階から年季の入った顔の老人が降りてきた。


 ピッとした燕尾服に身を包んだその老人は、偉い人物の世話をする執事を思わせる。その執事は一階に両足を付けると、エントランスにいたメンバーを見て、

「全員お集まりですね。お食事を用意しております。こちらへ」と、言い残すと、少し大きな扉の前へと向かい、手をかざした。扉はギイと唸りゆっくりと開く。そこにいた十人全員がお互いの顔を見合わせ、自分のことかと言いたげな顔をしながらその扉へ向かった。一人を除いて。

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