アイスが食べたい

 アイス

 アイス

 アイス♪


 ガリガリも良いが

 今は濃厚なバニラが食べたい。


 寒い冬にあったかい家で食べる

 アイスは格別だ。


 俺はコンビニに自転車チャリを走らす。


 時刻は夜の10時半。


 コンビニは家の近くにはない。

 自転車で

 20分ぐらいはかかる。


 楽しみのためなら

 頑張る俺。


 コンビニに着いたから

 ついでに

 雑誌のチェックをしながら

 漫画や小説もなにか面白いのはないかな〜と見渡していた。


「ねえ〜、ダーリン。早く家に帰らないと子どもたちが待ってるよ」

「大丈夫だよ〜。子どもたちのことは母さんが見ててくれてるんだから。久しぶりのデートをたっぷり楽しもうぜ、ハニー♡」


 雑誌を読む俺の背後で繰り広げられるラブラブ夫婦の会話。


 べつに。

 悔しくもなんもない。

 俺にはたしかに

 隣りにいてくれる

 彼女もカミさんも

 いないさ。

 誰もいないさ。


 でもなんかなんとな〜く聞いたことがある声だなあ。

 

 チラっと俺が見たその夫婦。


 おいおい。

 元カノじゃんか。


 何年か前に付き合っていた彼女だった。

 最後の彼女。


 俺はこの人に振られてからもう誰とも付き合えていなかった。


 切ねえな。


 まあ幸せそうでなにより。


 俺はアイスを買うことなく

 そっとコンビニを出て

 家に帰った。


 帰り道はやけにさみいなあ。


 行きより数段階はさみいなあ。


 切ねえ。




  



 

 

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