再会(2010.3.31)

先日、運転しながらラジオを聞いていたら、

懐かしい曲のイントロが流れてきた。

オレは思わず口ずさむ。

♪何気ない毎日が 風のように過ぎてゆく

確かこの歌は・・・、あれ? 曲名が出てこない。


歌っているのは、中村雅俊であることはわかる。

小学生の時に聞いていたから、昭和五十年代の曲だろう。

出会い、別れ、そして再会を綴った歌だ。

親のテープを繰り返し聞いているうちに、子供だったオレも覚えてしまった。


あれから三十年あまり。

当時は知らなかった出会いと別れを、幾度も経験した。

しかしこの歌の歌詞にあるような、

別れた人とどこかの街で偶然に会う、という経験は未だにない。


そういえば、小学生の時のオレはこの歌を聞きながら、

別れってどんななんだろう、と想いを馳せていた。

そして今は、偶然の再会について想いを馳せている。

まるであの頃の自分に戻ったような錯覚に、胸が一杯になる。


♪それでもいつか どこかの街で

♪会ったなら肩を叩いて 微笑みあおう

ラジオに合わせてサビを歌いながら、もやもやとした気持ちに包まれる。

あー、何て名前の曲だったっけ・・・?


その時ふと思い付くことがあり、オレは急いで車を停める。

そして携帯で、ラジオ局のホームページを見た。

オンエア中の歌の曲名が表示されているのを、思い出したからだ。

「いつか街で会ったなら」

そうだよ、そうだよ、そうだった・・・

あの頃は知らなかったこの街で、再会を果たしたのは人ではなくこの歌だった。




<2010年3月31日投稿>

はてなダイアリー 今週のお題「出会いと別れ」

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