ACT.52 作戦会議(Ⅲ)
▽▲▽
「えーそれでは、作戦が煮詰まったところで、今回の作戦会議は終了とさせていただきます。本番に向けての準備鍛錬などを各自よろしくお願いします」
各人が当日の役割を把握したところで、作戦会議はそうして解散となった。
円卓を去る各々は、この数日後に控える大戦を前にさまざまな表情を受けべている。
ある者は不安そうな顔、ある者は意気揚々と、またある者は戦意を滾らせ。
そして、そんな中でカイトは、なんというか微妙な表情を浮かべていた。
「カイトさん、どうしたんですか、そんな妙な顔して? 何か作戦に不満が?」
「いや、作戦に不満はないんだよ、ただ――」
「おっと、ちょっと待ちな!」
そういって場所を変えて話を続けようと席を立とうとした時、今回の作戦の中核の一人たる少女・アキハから声をかけられる。
「おい、お前。確かアイツと縁があったな」
「アイツ?」
「あぁ、今回の会議に遅れてくる奴が一人いたんだよ。まぁ結局間に合わなかったが、あと十分もしたら来るっポイから待って説明してやってくれ」
「いや、それなら俺よりライガさんとか適任が――」
「いいや、彼の場合君が適任だ」
アキハの意見に同意したのは、まだ円卓に残っていたライガだった。
「作戦前に、わだかまりは消しとかないとね」
「――いや、それってどういう?」
「まぁ、あとは任せたわ!」
そう言って、ライガとアキハは円卓を後にする。
円卓には、そうしてカイトとナギだけが残った。
「誰なんでしょうね、アイツって。誰かトラブルになったことってあります?」
ナギにそんなことを聞かれたカイトは、顎に手を当てて少し考え込む。
そもそも、カイトのこの世界での人脈なんて少ない――というより少なすぎるといっても過言ではないので、そんな心当たりはすぐに見つかった。
「――あったわ。正確にはそいつじゃなくて、そいつの取り巻きとだけど」
「あったんですか」
「あった。それにそいつ自身とも、今会ったらちょっとぎくしゃくするかもしれない」
そう言って、カイトは手で顔を覆って天を仰ぎ見る。
彼と再び相まみえるとは思っていたが、ソレはきっとどこかの戦場で敵同士としてだろうと思っていたのだし、多分向こうもそのつもりでいるだろうから、今は非常に会いづらい。
おそらく、そのことをわかっててあの二人は、カイトにこの役目を言い渡したのだろうが、正直カイトは、二人を少し恨んだ。
そうしていると、円卓のあるこの会場の扉が開いて、一人の青年が入ってきた。
「私用で遅れてしまい申し訳ないです。今大丈夫です、か――」
その青年は、円卓にいたナギに話しかけた途中で、その隣で天を仰ぐ人物がカイトであることに気が付いて言葉を詰まらせる。
カイトもそんな青年に静かに向き直り、こう声をかけた。
「久しぶりだな、スズハヤ」
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