町の言い伝え/昔の町で

―町の言い伝えはこんな話―。


昔、そこの地方では有名な武将がいた。


しかし戦に敗れ、この土地にたどり着いた。


数人の部下を連れただけの武将は、なけなしの財産を町人に与え、ここにかくまうように頼んだ。


町人はそれを承諾した。


しかし武将の首を狙う敵の大将の部下が、町に来た。


そしてこう言った。


―敵の首を差し出せば、主から褒美が出よう―と。


その夜。町人達は武将達に酒をふるまった。酔っている隙に武器を盗み、隠した。


そして酔いつぶれたところを襲い、武将の首を取った。


部下達もみな殺され、首を切られながら武将は叫んだ。


―鬼にも勝る非情な行為! 首が無くとも恨みは消えぬ!―と。


そうして町人達は褒美を得た。


しかしそれと引き替えにかった恨みは重く、広く町人達に襲いかかった。


首を無くした死体が夜な夜な町の中を徘徊し、疫病を撒き散らし、恐怖を与えた。


そして大勢の町人が苦しんだ。だから決めた。


町の守り神である大岩を動かし、死体を潰そうと。


そしてそれは成功した。


町人は大岩の前に、新たな守り神としてお地蔵さんを建てた。


罪を許してもらう為に。


効果は今でも続いていると言う。

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