7 流星街の孤児達

 アルミが何かを見つけて駆け寄る。 


「やったぁ! 今日はチキンソテーね」


 足を持って逆さに吊るしたのは大きな鳥。

 辺りを見回すと、他に何匹か道端に転がっていた。


 わからない。

 なんで鳥が落ちてるんだろ?

 アルミに聞いてみよう。


「なんで、こんなに鳥が落ちてるの?」


 彼女は転がる鳥を拾いながら説明した。


「空を飛ぶ鳥が、隕石に当たって落ちてくるのよ。ほら」


 突き出された1羽の鳥を見ると、顔や身体に殴られたようなアザが沢山できていた。

 アルミはヒモを取り出して、鳥の足を縛ると列車のように鳥同士の足を、ヒモでつなげながら言う。


「他の町じゃ、空飛ぶ乗り物が飛んでるらしいけど、この町で空を飛ぶなんて自殺行為よ」


 アルミは数珠つなぎにした鳥を、肩にかけて砂と瓦礫の町を歩き出す。


 ゾディアック・ストリートの町名は、”冬の星座”と同じ位置が当てられていて、ここは街の中心に位置する、ゾディアック・ストリート・オリオン座7番街。

 このにぎわう市場バザールが、僕とアルミの帰る場所ホームです。


 戻ってくるなり、石畳にチョークで落書きする5歳くらいの子供が寄って来て、いきなりつっかかる。


「おい、アルミ」


「アルミおさんでしょ」


 語気を強めたアルミは眉を吊らせて、言い直させようとした。

 野良犬のように目付きの悪い、5歳くらいの男の子。

 ボサボサの黒い髪に白いTシャツとボロボロの短パンを着ている。

 生意気な男の子はアルミにつめ寄った。


「いつになったらハンマーくれるんだよ?」


「アトム。あんたには、まだ早いわよ」


 アトムと呼ばれた少年は、冷たくあしらわれたことに対して、ムキになり噛み付く。


「オレがハンマー持ったら、アルミよりも隕石を打ち返すぜ!」


「流星打ちをナメるんじゃないわよ。だいたいあんた、ハンマーを持ち上げられないでしよ?」


「俺はもう5歳だ! ハンマーくらい持ち上げられる!」


「そう? じゃぁ、どうぞ」


 アルミは肩に担いだハンマーを、生意気なアトムに渡した。

 突き出されたハンマーを両手で持つと、さっきまでの威勢はどこへいったのかアトムは、しばらくハンマーを持ったまま動かなくなった。


 それから小さな身体が震え出して、ハンマーごと前のめりに倒れそうになると、アルミが男の子を捕まえ、ハンマーを取り上げた。


「ほら? ハンマーはあんたが大きくなって、力かついてからよ」


「俺は力持ちだぁ!」


 負け犬の遠吠えとしか言いようがない。

 僕を怒鳴るようにアルミが大きく息を吸うと、吐き出す前に猫のような動物がお腹に飛びついて、彼女の貯めこんだ空気を逃した。


「アルミお姉ちゃん!」


「ウラン!」


 ひな鳥のようにヨタヨタ歩いて来た、小さな女の子がアルミにしがみついて、離れようとしない。

 アルミはしゃがむと、ひな鳥のようなウランを抱きしめて、ほっぺたに寄せた。


「ウラン、ただいまぁ! ん? あんた、また瓦礫の中で遊んでたでしょ? 髪が砂だらけじゃん」


「瓦礫の中、トンネルみたいで面白いよ!」


「瓦礫は崩れるから危ないって、何度も言ったでしょ?」


 アルミは生意気な少年を睨んで叱る。


「ちょっとアトム。あんたお兄ちゃんなんだから、止めなさいよ」


「うるせぇ! 母ちゃんみたいに言うな」


 ふてくされた少年は駆け出し、そのままどこかへ行ってしまった。

 妹のウランが追いかける。


「お兄ちゃん!」

 

「コラッ、アトム! ウラン! 晩ゴハンには店に戻ってきなさいよ!」


 お姉さんというより、本当にお母さんみたいだ。

 アルミの家族?


「あの2人はアルミの弟と妹と?」


 じゃじゃ馬娘が少しうつむきながら、首を横にふった。


「違う。あの子たちも、隕石でパパやママが死んじゃったのよ。だからウチの店で面倒を見てるんだけど、見たとおり、アトムは言うこと聞かないから大変よ」

 

 アルミと同じ、隕石の災害で孤児になった兄妹。

 なんか、複雑だなぁ。

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