第4章50幕 原初<primitive>

 頑張ってと言われてもまず何をすればいいのかすら分かりません。

 周辺は暗く、灯りを探す、もしくは灯りを作るところからでしょうか。

 幸い、【称号】は使えるそうなので魔法で出せます。

 「≪ライト・ボール≫」

 とても小さい光を放つ球体を人差し指の先端に召喚します。

 多少の視野は確保できたのでこれでうろうろしてみましょうか。

 精神世界だからか、いつものような疲労を感じることもなく動き回ることができます。これは助かりますね。

 

 しばらく歩き回りましたが、手掛かりも無く、途方に暮れてしまいます。

 ヒントとかもらえないかな?

 少し聞いてみましょう。

 「すいません」

 『なんだい?』

 「ヒントが欲しいのですが」

 『ヒント? もう十分あげたよ』

 「どういうことです?」

 『言ったじゃないか。精霊を全く感じない君なら簡単だって』

 「それの意味がわかりません」

 『前回来た人はもっと精霊にとりつかれてたけど何とかしてたよ?』

 「そんな人がいたんですね」

 そう返しながら頭の中で思考を始めます。

 精霊を微塵も感じない私なら簡単で、精霊を感じる人には大変。

 つまりこの辺には精霊がたくさんいるということでしょうか。

 プレイヤーを一人別次元に飛ばせる精霊神の力は私でも感じ取れています。

 ならばこの中で私が感じうる最大の気配の所に行けばいいということでしょうか。

 『正解。君なら簡単。そう言うことだよ』

 「助言ありがとう」

 神経を集中させ、魔力の流れを感じます。

 スキルにそう言うものがあるわけではないのですが、ある程度VRに慣れてくると少し感じ取れるようです。

 遠方に少し、強い魔力を感じます。

 あれでしょうか。


 体感時間で20分ほど歩き、先ほど強い魔力を感じた場所へやってきます。

 見回しても特に何もありませんでしたが、一か所不自然なほどに魔力がたまっているポイントを発見しました。

 『おっ。見つけたみたいだね』

 「これでいいんですか?」

 『大丈夫。思ったよりも時間かかったね。じゃぁ具現化するよ』

 「はい」

 私がそう返事をすると、正面にさらに魔力が集まってくる気配がします。

 『向こうの次元で言うと『エレスティアナ』の王城、王座の間ってところだね』

 「そうなんですか。向こうの次元では見ることができないのですか?」

 『それは無理だよ。壊されちゃったもの。国王に』

 「え?」

 『『エレスティアナ』の国王が精霊神像を壊して椅子にしちゃったからね。だから無属性をつかさどる精霊神が死に絶え、こちらの次元で僕が修復しているってことさ』

 「復活できるのですか?」

 『それは君たち次第だよ。じゃぁ第二の試練だ』

 「あっ。見つけるまでじゃないんですね」

 『いやいや。ここからが本番だよ。その魔力溜まりに手を入れて』

 「こうですか?」

 言われた通りに手を突っ込みます。

 『今まで見てきた精霊や精霊神像を思い浮かべて』

 ここに来るまで見つけてきた精霊神像、そしてエルマが召喚する精霊や、ステイシーが召喚する精霊、私の短剣に宿った精霊、『風精の高原』でみた精霊神という存在を頭に思いうかべます。

 『なかなかいい精霊に出会ってきたんだね。気張ってね』

 「えっ? どうい……」

 そう言った瞬間精神世界での私の意識は途絶えました。


 ふと気が付くと、別次元と言われた精神世界ではなく、いつもの次元にいることがわかりました。

 先ほどの拘束は解け、地面に横たわっているようです。

 「気が付きましたか?」

 私を拘束した張本人が言います。

 「あなた……何者ですか? 人……ではないですよね。精霊神でしょうか?」

 「そうです。全ての精霊を管理する長、という立場ですね。木の精霊神、エレスティアーナと申します」

 やはりそうですよね。向こうの次元でめっちゃばらしてましたし。

 「こっちの次元ではあまり知られていないからばらさないでください。さて事の詳細をお話します」

 「その前に立ち上がりたいので手を貸してもらえますか?」

 ≪精神衰弱≫と≪肉体制御不能≫という珍しい状態異常に罹患していて身動きが取れないのです。

 「これは申し訳ない」

 そう謝ったエレスティアーナは手をクルッと回し樹のようなものを召喚し、私を起こしてくれました。

 「ありがとうございます」

 「いえ。こちらこそ気が付かなくて申し訳ないです」

 「凄い魔法ですね」

 「まぁ僕だけの魔法ですから。外の人でも扱えない魔法ですよ。少しそのままでいて貰えれば状態異常も治るはずです」

 「分かりました」

 「ではお話しますね」


 「『精霊都市 エレスティアナ』は複数の都市の合併なのです」

 「知っています」

 「ありがとうございます。元々存在していた11の都市の中で最も大きな土地を持っていたのは無属性精霊神が納めていた都市でした。複数の都市の中心として扱うのにはもってこいでした。立地も良かったですし」

 「立地が良いとは?」

 「えっと。他の国と最も近い場所にあったのです」

 「というと?」

 「ですので、防衛戦力をそこに集結しさえすれば、国を落とされる事はない、ということです。続けますね」

 「お願いします」

 「初代の国王、現在の国王の父親は元々『エレスティアーナ』の出身でした。最大の武力を持ち誰も歯向かうことができなかったのです。しかし、人は逆らえずとも僕たち精霊神が拒むこともあります。現に無属性精霊神はそうでした」

 「でしょうね。自分が管理している土地なわけですからね」

 「そこで歯向かった無属性精霊神の精霊神像を破壊し、椅子にしてしまったのです。精霊神像は僕たちにとって向こうの次元とこちらの次元をつなげておくための装置の役割をしていたんです」

 「それを壊されて無属性の精霊神はこちらに顕現できないと?」

 「そう言うことです。だから精霊神像を修復するために、一番力のあった僕が無属性精霊神……ノーアを向こうの次元に拘束しているのです」

 「向こうの次元で修復するのですか?」

 「はい。そのためなるべく濃い魔力を集め向こうの次元に集めています。同時に、この都市全体から僕の精霊神像に接続されている精霊回路へと流れ込む精霊魔力、君たち人間が気力と呼ぶものです、それも集めているのです」

 気力……ENのことですね。

 「それを集めれば修復が可能ということですね」

 「そうですね。向こうの次元で精霊神像が再び完成したら、僕が広げた精霊回路の中で気力と魔力が濃くなる地点に顕現させることでノーアは復活します」

 「それで私のMPとENをごっそり持っていたわけですね。ついでにTPとSPも」

 「取りすぎたことは否めないです。でもそのおかげでまたノーアの復活に近づきました。あと数百年はかかりそうですが。ちなみに僕はその報酬として精霊駆動を差し上げています」

 「聞いてもいいですか?」

 「どうぞ」

 「何故、全ての精霊神像を回らないといけなかったのですか?」

 「それは精霊回路に魔力と気力を馴染ませるためです。全く接触したことのない魔力や気力をいきなり中心に流したら乱れてしまいますから」

 「なるほど」

 それですべての精霊神像に触れる、だったんですね。

 「私はここを回った後『エレスティアナ』へ行き、最後の精霊神像に接触する予定だったのですが」

 「僕は精霊回路を自在に動けます。十個目の精霊神像に触ったところで具現化していますよ」

 便利なシステムですね。

 「ではなぜ試練と言っていたのですか?」

 「それはただのぼくの趣味です。実際僕が接触した時点であちらの次元に行ってもらい、誘導してノーアの元へ案内していました」

 えー。

 「めんどくさそうな顔をしないでください。こういう暇つぶしが無いと退屈で大変なのです。他の精霊神と違って僕は自分の意志でしか顕現できませんから」

 「木属性は誰も使えませんもんね」

 ちょっと使ってみたいですけどね。

 「原初の精霊としての役割もありますので」

 「というと?」

 「新しい精霊を生み出しているんです。このように」

 そう言ったエレスティアーナの胸のあたりからポヨンとシャボン玉のようなものが誕生しました。

 「これが新しい精霊の誕生です。まだこの生まれたての精霊には属性がありませんので、向こうの次元に送り、属性を開花させるのです」

 「じゃぁ皆が大量に精霊を召喚したら大変ですね」

 「そうでもないですよ。下位の精霊でしたら上位の精霊が量産してくれますし。僕が作るのは人間と等しくコミュニケーションが取れる精霊ですので」

 「そうなんですか」

 「そろそろ身体が動くこ頃でしょうか」

 そう言われた私は状態異常を確認します。

 すると先ほどまでついていた二つの状態異常が無くなり、いつも通りの動きができるようになっていました。

 「あっ。大丈夫です」

 「長々とありがとうございました。ではこちら報酬の精霊駆動です」

 精霊駆動と呼ばれた球体を二つ手渡してきます。

 「あれ? 二つも?」

 「頂いた魔力と気力の分です。二人分頂きましたから」

 「なるほど。ありがとうございます」

 「いえ。いいんです。また機会があったら来てください。魔力、気力と引き換えに精霊駆動をお渡しいたします」

 「分かりました。ではとりあえずこの二つは大事に使わせていただきます」

 「乗り物にするなら一つで足ります。武器にでもしたらどうですか?」

 「と言ってもこれを武器にするのはちょっと」

 「確かに、武器にしてもいいことはないかもしれませんね。実は少し能力を覗かせていただきました」

 「乗り物に二個積みましょうか……」

 「それだけの技術がある人物がいるかは分かりません」

 「探します。当てはありますし」

 「そうですか。ではまたいらしてください」

 「はい。お世話になりました」

 私はそうエレスティアーナにお辞儀をし、村長の家を出て行きました。

                                      to be continued...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る