第149話【子の心、親知らず その1】

クリストファーは自室で項垂れていた。


「私一人で留守か・・・」

「殿下、我々も付いています故に・・・」


クリストファーの護衛の騎士が慰める。


「それは良いのだが・・・やはり不安だ・・・

件の盗賊達が別動隊を率いて攻めて来たら如何しよう」

「この大王城にですか?連中が現れた場所はこの大王城よりも遠いのです

もし攻めて来る事が有れば直ぐに分かりますよ」

「そ、そうか・・・ならば安心だな」

「それよりも殿下、皆が留守と言う事は居ない間に色々と出来ますね」

「・・・・・君は私に陛下の留守中に叛意せよと言うのかね?」

「まさか、殿下にはそんな気概も能力もやる気も無いのは承知しております」

「はっきりと言うね・・・まぁその通りだけど・・・」

「羽目を外して遊べるでしょう」

「うーん、もっと若い頃にやりたかったなぁ、そう言う事は」


ははは、と多少明るくなったクリストファーの自室。



そんなお気楽ムードとは対照的なヴォルフガングの自室。


「・・・此度の戦、どの様になると思う?ハンス」

「は、恐らくどさくさに紛れて謀殺が起こるでしょうな

此度は【御使い】の時とは違い陛下も釘を刺さなかったですし」

「そうなるよな・・・となるとやはり警戒すべきはフォンか?」

「フォン殿下の野心は確かに警戒すべきですが

私としてはキャスリーン姫を警戒すべきだと進言します」

「キャスリーン・・・あの娘か・・・読み難いし警戒に値すると思うが

何故彼女を一番に押す?」

「キャスリーン姫はヨナスと手を組んでいますからね

私を殺しに来る可能性は高いと思います」

「・・・確かに、ヨナスと君は嫌い合っているからな・・・

この機に乗じて殺しに来る可能性は有るか」

「こちらから打って出ますか?」

「・・・・・いや、迎え撃つ形で大丈夫だろう」

「・・・分かりました、それで行きましょう」


重苦しい会話だった、一方フォンの方は気楽である。

フォンは陸軍の力自慢達を呼び集めた。


「フォン殿下、一体何の御用件でしょう」

「おう、お前達陸軍の中でもトップクラスに強いお前達に特別な任務を与える」

「特別な任務ですと?」

「此度の戦では謀殺が横行すると俺は思っている

だから殺されない様に出来る限り最前線に立つ事にする」

「最前線ですと!?」

「そうだ、最前線なら謀殺される事も無いだろう」

「そうなのですか?」

「あぁ、謀殺出来る状況じゃないからな

だが最前線は当然ながら危険地帯

そこでお前達に俺を守って貰いたいと言う事だ」

「なるほど!!分かりました!!」

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