心臓の章

第147話【野心を抱く盗賊】

大王城の大会議室では王子達を含めた王国の重鎮が集まっていた。

陸軍軍師ウェブスターが全員揃った事を確認すると議題を発表した。


「王国の特に重要でも無い平地にて、とある名も無き村々が次々と襲われた

襲ったのは最近出て来た盗賊団【大統一盗賊団】

王国中の盗賊達を集めて作り出したと称するこの盗賊団は人数が非常に多い

そして何よりその目的は

【王国の全てを奪いつくし新しい国を建国する】という野心に

溢れた物であります」

「盗賊が建国じゃと?随分大口を叩くのぉ」

「盗賊やる奴は馬鹿ですからねぇ」

「アンタもそうじゃったろ」

「私は義賊です」


シモンの軽口に応対するシュルトゥ。


「荒唐無稽な話に聞こえるが数だけなら凄まじい数の盗賊

王国騎士団や陸軍魔物のスタンピートにも匹敵するその物量

それらを束ねる首領マグスは恐ろしい実力の持ち主である

その足は早馬を追い越し

拳は岩を砕き、躊躇いなく部下を斬る冷酷な心を持っている

しかし彼は元々、田舎の小さな盗賊団のボス、ここまでの力を持ち得なかった

彼が何故ここまでの力を持ちえたのか?」

「ファウストの死体を手に入れたから?そうだな?」


フォースタスがファウストの声で尋ねる。


「その可能性は充分に有ります、事実【大統一盗賊団】のシンボルマークは

ハート、つまり心臓です」

「心臓か・・・何とも重要そうな部位だな」

「えぇ・・・最重要部位と言っても過言ではありません」

「頭の方が重要だろ?」

「いやいや団長、心臓無しで生きていける生き物なんて居ませんよ」


ハンスの言葉を否定するヨナス。


「兎に角、被害が甚大ですのでファウストの死体の件を抜きにしても

討伐は必須だと進言致す次第で御座います」


ウェブスターが纏めた。


「構わん

ファウストの死体を持っている可能性が有るのならば行って始末してこい」


フォースタスの鶴の一声で【大統一盗賊団】の殲滅が決まった。


「はっ、ならば討伐隊の編成を」

「する必要は無い、全軍で片付ける」

「は?全軍?」


事も無げに語るフォースタスの言葉に首を傾げるウェブスター。


「全軍とは全軍の事だ

王国騎士団、近衛、宮廷魔術師、ファウストの仲間だった者達

全てを投入して、この逆賊を討ち取る、異論は有るか?」

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