第10話 英雄の真価
「くはっ…。」
『光明のガディウス最早虫の息です』
「……憶測でモノを、言うな‥!」
『憶測ではありません、分析した数値を元に導き出した結果です』
「……統計など、アテにならん‥。」
『私に限ってはそれはあり得ません』
話にならんと突き放したいものだがこのザマだ、正しいのだろうな‥。
〈ライト・オン〉
『無駄です』
死神譲りの闇が光を隠す。
「……天敵が近くにいたとはな‥。」
『いません、相手は私ですので』
〈メテオ・ダーツ〉
「ぐあぁ‥!」
暗闇から隕石、流れ星にしては華が無い。只の石故仕方は無いが。
「……弱点が露呈したか‥」
エレメンターズは自然を武器とする。だが逆に言えば、扱えるものは常に一つで機動力が無いともいえる。その唯一の武器さえ抑えられてしまえば極端に戦力が減退する事になる
『追い討ちをかけます』
「……丁寧に教えてくれるのか‥。」
『はい』
〈メディスン・ハザード〉
「……う、くおっ‥。」
影から投げられたボール、体に当たって弾けると菌が充満しガディウスに感染する。
『濃度は抑えておきました。
通常ならば致死量です』
「痺れる…厄介だ‥。」
『お終いです、光明のガディウス』
震える手足、動かない体。
終幕の宣言に返答すら出来ない始末。
〈ボルテック・スピア〉
闇空に一筋、雷光が輝く。
『さようなら』
空間を穿ち突く
「……終わりか、下らんな‥。」
諦め、焦燥すらも枯れ果て項垂れた。もう一度顔を見上げるとそこには闇。
「……ん‥?」
しかしその闇は空の色でなく、瞳を閉じた暗闇でもない。何かに蓋をされた、光の残る黒い影。
「おい、電球野郎‥光を照らせ。
…見えねぇんだよ、俺の目だけじゃ」
「……。」
聞こえる声に従った、正しいかどうかを確認せずに、ただ言う事を聞いた。
〈ライト・オン〉
「有難てぇ、これで良く見える。
しっかり狙って殴れるってもんだぜ」
〈スター・ライトパンチィ!〉
拳と真っ向勝負の雷槍は衝撃に劣り、先端から砕け落ちる。
「…相変わらず、品の無い男だ‥。」
「そんなもん必要あるか?」
「……要らんな、お前には‥。」
貶しつつその顔は、安堵の色を帯びていた。
「まだ戦えるか?」
「いや‥情け無いが、もう…。
‥出来る事といったら、これだけだ」
痺れる腕を無理矢理動かし光の剣を生成し、スターに差し出す。
「……持っていけ‥。」
「光の剣かぁ、変態の鎌よりマシかもな。」
「……あんなものと一緒にするな‥」
「んじゃあ行ってくるぜ。」
「……待て。」
挨拶をし、剣を肩に掛け背を向け赴く英雄を気が付けば止めていた。
「……死ぬなよ‥?」
「…舐めてもらっちゃ困るぜ。」
「……ふん‥。」
それもそうだな、忘れていた。
『光明のガディウス、撃破
ウイルスに体力を奪われたようです』
「そうか、アイツやられたか。
それじゃコレは肩身って事か?」
『死亡は確認できません』
「あんだよ、違ぇのか‥ったく。」
品だけでなく、節度も無い模様だ。
『次は貴方です、パワー・スター』
「わかってるよ。
その為に出てきたんだろうが」
『そうですか、ならば話が早い』
〈Mr.インセクト〉
「あん?」
『タイプカマキリ』
「よりによってそれかよおい。」
『不服ですか、仕方ありませんね』
〈分身の術〉
増える二体のアシスター
そして一体のカマキリ
〈タイプ鈴虫〉 〈ステルスマン〉
一つは虫へ、もう一つは姿を消した。
「鏡 アキラもびっくりだな。」
ここまでの展開が出来れば未だ伸び代があったかもしれない、惜しい作家だ。
『参ります』
前方からカマキリアシストの鎌落とし、切り裂くというより叩き潰すに近い荒業。回避しようと跳び上がるとそこにステルスアシストが姿を現わす。
〈フィスト・ハンマー〉
受け身の取れぬ空中での拳、スターは手に握る光の剣を握った指へ投げ刺す
「よっと、痛いか?悪りぃな。」
一瞬怯んだ拳へ飛び乗り剣の持ち手に足を乗せる。そのままいつかの杭の土台の如く踏み上げ高く跳び上がる。
「おっと、剣は返して貰うぜ?
‥お前を斬るのに必要だからよ。」
己の高さがアシスターの頭を超えた辺りの処で剣を振り上げ天へと翳す。
「電球野郎、お陰で出来たぜ。
新しい技がよ」
〈スター・ライトスラッシュ〉
一閃の光が、機械の塊を叩き割る。
「まず一人‥」
『耳をお借りします』 「何?」
二つに裂けたアシストに見向きもせず鈴虫アシストが鼓膜を音波で揺らす。
「うるっせぇ!
喚くなムシマシンが!」
音源である頭部に剣を投げるも音壁により跳ね返される。
「この野郎、イライラすんなぁ」
耳を塞いで目に入ったのは機械の破片、先程斬ったガラクタの足。
「‥思ったより軽いな、コレ」
戦略など、ありはしない。ただ大きなもので、より殴るだけ。
『キ‥キキ…キキィィ!!』
「うるせえって、言ってんだろが!」
そそり立つ足にふりかぶった一撃。体勢を崩す鈴虫。グラつく足、足をグラつかせたかつて足だった機械。
「さて、足は全部で何本でしょう?」
『キ‥キキ…』
「お、遂に倒れたか!」
倒れるモノの顔に振り上げる英雄の足
〈スター・サン・バレット〉
靴飛ばしならぬ顔飛ばし、裏になったら雨だろうか?
「結構飛んだな〜!
ともかくこれで‥二人目だ。」
そろそろか?
いや、まだか…。
「よぉ本体、待ったか?
お前の番だぜ漸くよ!」
『そうですか、私で一人‥』
寂しいという感覚は無い。ならば何故項垂れているのか、アシスターのする事は一つ。分析し実証すること
メキメキッ… 「ん、なんだ?」
周囲の無数の木々が生い茂る。
『形態変化・木人化』
メキメキ…メキメキメキッ‥!
木々はアシスターと同じ形を成し、動き始める木人となる。
『これで一体、何人でしょうか?』
「‥お前、友達いねぇだろ。」
ロード、まだできねぇのか!?
『木人は、私と同じ戦力です』
「なんでんなこと教えてくれんだよ」
『単刀直入に申し上げます。
お諦め下さい、パワー・スター様』
「もしかしてお前、馬鹿にしてんのか。
俺をよ」
『していません。
唯、今の貴方から上質な情報は得られない。そう判断しています』
「…そうかよ。
お前らは本当に愛想が無ぇな」
『そうでしょうか?』
機械の人、情報と感情の壁。
超えられず理解されず、相入れる事も必要も無い。お互いが共鳴など、到底出来ない。
「根性論なんざ大っ嫌いだが、悪に屈しない揺るぎない正義、それがヒーローって奴だ。」
『悪に屈しない‥ですか』
「俺の言葉じゃあ無ぇけどな。」
ヒーロー全員が勝手に信じて言ってる言葉だ
『ジジ…なんだ‥軀が…?』
「‥やっとかよ。」
始まったか、遅せぇっての。
『停止装置が‥作動して…』
「お前はまだ動いてるだろ。」
『…何を‥いっている…?』
「構えろ、拳。
最後の一発、行くぞ」
『最後の一発…私の‥一体、何を…』
「一つしか無ぇだろ。
アレだよ〝アレ〟」
『‥ア……レ‥‥?』
ロウディが作動させた停止装置が完全に起動するまで残り僅か。それまでにヒーローは決着をつけようと試みる。アシスターは己の技を持たない。故に記録の中から最良のデータを引き出さなければならない。
出す技はアレしか無い。独自の分析で出した技、いわゆるアレを機械の戦士は口に出し、英雄と共に同時に、唱えた。
『スターライト‥』 〈パンチ〉
機械の左、英雄の右
同じ力と質量が、共鳴する。
「じゃあな、アシスター」
『……』
停止装置が作動し母体の動きが止まる
複数生まれた木人は消滅、真っさらなコンクリートの道路へと立ち戻る。
「はっ‥は…はぁー。
焦ったぜ、ギリギリだ。」
ロードの奴上手くやりやがったな‥。
『お疲れ様です、スター様』
「あぁ、ホントにお疲れだ。
俺はもう戦わねぇぞ、休むからな」
『そうですね。
ゆっくり休んで下さい』
「ああ言われなくてもゆっくり…て、おい!なんでお前がいんだよロード」
『結果報告も兼ねまして、一時的に私のデータを起動させておいたのです』
「丁寧だな、お前。
いや慎重なのか、馬鹿なのか?」
『‥はい。
私は丁寧で、慎重で、馬鹿です』
『これで終わりです、これで…』
「‥そうかよ。」
『はい‥これで…終…!』
「なんだ、どうした?」
ここに来ての誤作動、ロードを映し出す画面は燃え上がり肥大する。
『離れて‥下さい…。アシスターが‥私のデータに、入り込んで…!」
「くそったれがぁ‥!」
『離れて‥くだ、くだくだくだくだ』
〈フレイム・フルバースト〉
火達磨の壊れた機械が英雄に張り付き誤作動を続ける。
「てめっ、離せコ、ラァッ!
‥このまま自爆しようってか!?」
『くだくだくだくだくだ』
「バグりやがってこの…離せって‥」
『くだ…さようなら‥』
「‥あん?」
『英雄…パワー・スター様‥。』
「…なんだよ、態々言いに来やがったのか?」
まったくどいつもこいつも、遠回しな面倒くせぇ奴ばっかりだぜ。
「ああ。
さよならだ、アシスター‥。」
街は爆風に呑まれ、消える
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます