第16話 お出かけする日曜日 中編



 ショッピングモールは湾岸から海に突き出した土地に建っているかなりの広さの複合施設だ。

 なんでも地下はガラス張りで海の中にいる様な雰囲気のカフェがあり、デートスポットとして人気らしい。


 駐車場に車を入れて、入り口の方へと歩いていく。

 鈴羽は当然、僕の腕にうでを絡ませてご満悦である。

 スタイルもよく人目を惹く美貌だから、周りの視線が痛い。当の本人は気にする風もなくいたって平常運転だ。


「ねぇねぇ皐月君、どこから回ろっか?服とか見に行く?あっ朝ご飯食べた?まだならカフェでもいく?」

 僕の腕を引っ張りながらそう言う彼女は、無邪気な子供みたいで微笑ましい。


「う〜ん、鈴羽の行きたいとこでいいよ。」


「そうだなぁ、とりあえずぐるっと見て回ろっか?」

 時間もあるし、僕等は中を散策することにした。


 ・・・のだが、



「きゃ〜ほら見て、これ可愛いくない?」

「あっ、この壁掛けの時計いいよね?」

「ほらほら、皐月君?この服皐月君に似合うと思うんだけど、どうかな?」

「このコップお揃いで欲しいなぁ〜でもこないだ買ったばっかだし・・」



 ・・・見事にいく先々の店に入っていく鈴羽。全く先に進まないです。

 すごく嬉しそうに話してくる鈴羽を見て僕もそんなことはどうでもよくなり入り口からすぐのショップで2時間くらいを過ごしたのだった。


 世間では、たぶんバカップル扱いになりそう・・・


 そんな鈴羽なんだけど、やっぱり目立つ。全体的にタイトな服を着ているのでスタイルの良さがよくわかるし、本当に楽しそうに笑うので周囲の視線を集める。


 結果、目を離すとすぐに声をかけられる。


 さらに


「結構です。間に合っておりますので。」


 と、先程とはうって変わってクールな表情で切って捨てる。

 僕の出る幕は全くない・・・


 そんなこんなで、現在鈴羽は、ぷくっと頰を膨らませて僕の腕にしがみついている。


「あ〜もう!せっかく楽しく遊んでるのに〜!」

 何故か僕の腕を軽くつねりながら鈴羽はご機嫌斜めに言う。

「そりゃあ、仕方ないよ、鈴羽はスタイルいいし美人だし、声もかけたくなるよ。僕も以前はどうやって声をかけたらいいか

 悩んだしね」


「・・・う、ありがと。」

 僕がそう言うと、今度は真っ赤になって俯いて僕に両手てましがみついてくる。


 ・・・なんだ?この可愛いいきものは?



 中央のショップが立ち並ぶ通りを抜けると、目の前は真っ青な海だった。


「うわぁ〜綺麗!」

 この辺りは自然保護が盛んで海も澄んでいて本当に綺麗な海だ。

 ここで「鈴羽のほうが綺麗だよ」なんて言おうものなら完全にバカップル認定されちゃうのであえて言わないでおく。


 海沿いには、オープンカフェが並んでいて僕等は海を見ながらお茶でもすることにした。



「でも、声をかけてきた人たちの驚く顔はちょっとかわいそうだったね」

「そうかな?知らない人にまで愛想良く出来ないし、する必要もないよ?皐月君がいるから」


 面と向かって言われるとかなり照れる。それは。


 僕は顔が熱くなるのを自覚しながらも

「仕事してるときは、あんな感じなんだね?」

「うん、そうかな。ほら、一応秘書課のトップとしてはそういうのも必要かなって、対外的なのもあるしね」

「秘書課のトップなんだ?結構偉いひとだ?」

「あはは、そんなにじゃないよ。」


 まぁどれだけ偉かろうが僕の彼女には違いないから関係ないけどね。


 そんなことを考えていると僕を鈴羽がじっと見つめてくる。なんだか哀しそうな目で。


「どうしたの?」

「うん、その・・社内ではちょっとは上の方だけど、そんなのってイヤ?キライになったりしない?」

「・・っ、ごめん。僕が無神経だった。確かに会社ではそうかもしれないけど、鈴羽は鈴羽だろ?で僕の彼女。僕はそれだけでいい。」


 そんなことでキライになったりするはずないじゃないか!僕も、もっと考えるべきだった。

 僕は自分でも驚くような口調でそう告げる。


 鈴羽はそんな僕に少しだけ驚いたみたいだけど


「えへへ、ありがと。・・・大好き」


 テーブルの上に置かれた僕の手に指を絡ませてはにかんだ笑顔で言った。



 僕の顔が体温がさっきよりも熱く感じたのは、もう暑くなってきた季節のせいではないと思った。









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