魔女と熱烈ファン6

「アン! フレイ! 無事だったのね」


二人を見つけたウォルタは急いで駆け寄った。そして、アンを抱きしめると言った。


「ごめんなさい。危険な目に合わせてしまって」


突然抱きしめられたアンの顔は、蒸気を噴き出さんばかりに、赤くなり、その場に膝をついた。


「おいおい、ちょっとファンサービスが過激すぎるよ」


フレイが笑って茶化した。


「わ、私はただ心配で!」


ウォルタも顔を真っ赤にした。すると、呼吸を整えたアンが言った


「……ウォルタ様のせいではございませんわ。ご一緒させていただきたいとお願いしたのは、わたくしの方ですもの……それに、フレイさんが守ってくださいましたから大丈夫でしたわ」


アンはフレイと視線を合わせて笑い合った。


「そう、フレイ……ありがとうね」


「へへ、改まって礼を言われるとくすぐったいな。さあ、仕事はまだ終わってないんだ、とっとと済ませて帰ろう!」


「……そうね!」


「はいですわ!」


夕暮れの中、三人はサラ川を後にした。





数日後、食堂で食事中のウォルタの背中に、フレイの声が響いた。


「ウォルタぁ! 助けてくれぇ!」


「どうしたのよ?」


「それが……」


フレイの背中に声が響いた。


「フレイさん! 今日の分のサイン、おねがいしますわ!」


フレイが振り返ると、そこには色紙とペンを持ったアンが立っていた。


「ちょっとアン、サインはもう何枚と書いただろう! いい加減にしてくれ!」


「いいえ、フレイさんのサインも何枚あっても足りませんわ。是非ともお願いしますわ!」


アンはキラキラした目で、フレイに訴えった。


「そんな目されても、ウチは限界だ! ウォルタ、何とか言ってやってくれぇ!」


「好かれるってことはいいことなんでしょ、よかったじゃないファンができて」


「そんなぁ!」


「フレイさぁん!」


それからも、アンの熱烈なアピールは数日間続いた。

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